日本ペンクラブは表現者の団体として、グーグル・ブック検索訴訟(書籍のスキャニングとネット公開に関する米国内の対グーグル訴訟)の和解案について、評価作業を継続中であるが、現時点において以下の三つの観点から見解を明らかにし、デジタル時代の著作権処理のあり方について警告する。

 第一は、著作権上の問題である。グーグルの書籍デジタル化に関する一連の行為は、日本の著作権上明白な複製権違反であるにもかかわらず、それを容認する形になる。また、米国内ルールである「フェアユース(公正利用)」条項を「世界基準」として事実上容認することになる点で、大きな問題を孕む。

 第二は、手続き上の問題である。申請しなければ権利が保護されないという「オプト・アウト(離脱)」方式を採用することは、権利者の立場を弱体化するおそれが多分にあり、これは著作権法の世界ルールであるベルヌ条約に抵触する可能性がある。このような大きな問題を抱えるルール変更を、一方的かつ不十分な情報開示のもとで行うことは、表現者の立場を軽視するものではないか。ネット上の閲覧が許可される絶版本の認定も、もっぱらグーグルもしくは米国内の団体に委ねられることになり、日本国内の表現者(出版社)の意思が軽視される可能性があるだろう。

 第三は、情報流通独占の問題である。グーグルという私企業の先行的行為が容認されることで、この分野における事実上の独占状態を生じ、情報流通の多様性を損なう危険性がある。一私企業によるデータベース化は、企業の方針あるいは存在に左右されるものであって、権利者の立場が極めて不確定なものになるとともに、出版文化の基盤自体も不確実なものに陥る可能性もある。さらに、グーグルの支援によって設立される権利処理のための機構である「レジストリ」によって、個人情報を含む著作権者の情報が事実上、独占的に集中管理されることには危険性が伴う。

 このように大きな問題を抱えた和解案は、表現の自由と出版文化の発展に大きな影を落とすことになり、日本ペンクラブとしては安易に容認できないことを、ここに表明する。

2009年4月24日

社団法人 日本ペンクラブ
会 長  阿刀田 高

"2008〜2009"の一覧へ