2006〜2007

出版社及び著述家に対する法務省勧告に抗議する声明

 法務省人権擁護局は2007年7月12日、東京法務局長名の勧告「奈良放火殺人事件に関する書籍の出版について」を、同年5月に刊行された『僕はパパを殺すことに決めた』の出版元である講談社と、著者の草薙厚子氏に手交した。

 しかし、その勧告を見ると、同書の著述と刊行を、一方的に「プライバシーの侵害」や「人権侵害行為」であると断定し、さらに「報道・出版の自由として許容される限度を超えている」と決めつけ、「謝罪」せよと迫るなど、表現の自由にあからさまに介入する内容になっている。

 そもそも現行の制度は、どのような基準で勧告や要請等の措置が取られるかが明確ではなく、それに対する反論や対抗・救済の手段も用意されていない。過去の例を見ても、勧告等によって書籍の流通や販売が「自粛」されるなど、実質的な禁書措置になっている場合が少なくない。

 表現活動や出版等において人権侵害があったのであれば、それはまず当事者間の話し合いによる解決や、事後的な訴訟による判断を待つべきである。それを、公権力が一方的に書籍の内容にまで踏み込んで判断し、要請や勧告等を行って、その流通・販売を阻害するなどということは、民主主義の基本原理である表現の自由を踏みにじるものである。

 私たち日本ペンクラブは、自由な表現活動を擁護する立場から、このたびの法務省が行った措置に抗議するとともに、今後、同様の措置を取らないことを強く求める。

2007年8月30日

社団法人 日本ペンクラブ
会長 阿刀田 高