●自衛隊の多国籍軍参加に反対する声明
小泉政府は六月十八日の閣議で、イラクに駐留する自衛隊が、三十日に正式に発足するイラク多国籍軍に参加することを決めた。多国籍軍への自衛隊参加は、憲法の不戦原則に背く。われわれ日本ペンクラブは、これに断固として反対する。
そもそも、これまでの政府見解は、「武力行使を目的とする多国籍軍の統一した指揮下に入れば憲法に反する」というものであった。いま政府はその言い繕いに苦しみ、ついに「自衛隊の独自の指揮権が日本にあるから憲法に違反しない」と言い出した。小泉首相も「参加はするが指揮は受けない」と強弁しているが、多国籍軍が統一した指揮下にあることは、国連安保理決議一五四六などからも明らかである。
この自衛隊の多国籍軍参加は、サミット寸前の日米首脳会談で小泉首相がブッシュ大統領に約束したことから始まった。憲法の根幹にかかわる重大事を、国会に諮らず、なによりも国民に何一つ説明しようとせずに、己れの一存で他国の大統領に約束し、帰国後は、その辻褄合わせに狂奔するなど、まことに見るに耐えない醜態である。
しかも、多くの疑問をのこしたままそそくさと閣議で決めるにいたっては、憲法の精神を踏みにじり、主権者である国民を置き去りにする暴挙であろう。これは国民も国会も必要としない事実上の憲法停止状態であり、つまり国民は憲法と国会を小泉首相に強奪されたといってよい。
こうした小泉流の問答無用の政治手法は太平洋戦争前のような軍事国家の到来につながる恐れがある。われわれは、あの言論の自由のない時代の再現を心から危惧するものである。また憲政を歪め、壊す暴走をわれわれは黙視できない。すべてを白紙に戻し、自衛隊を活動させるときは憲法に反しないことを基本に、イラクの人びとのための支援はどうあるべきかを、国民こぞって真摯に議論すべきである。
2004年6月23日
社団法人 日本ペンクラブ 会長 井上ひさし


