2002〜2003

今回の米英軍等によるイラク攻撃について 国連に対し実態調査をするよう要請する

国際連合 コフィー・アナン事務総長殿
 日本ペンクラブは、アメリカ、イギリス等がイラクに対する戦争を開始しようとしている時点で、また、日本の小泉内閣が二国に追随して戦争に加担しようとしている時点で、それらを阻止するべく訴えてきた。しかるに、平和を願う世界の世論と我々の努力の甲斐無く、戦争は強行された。
 日本ペンクラブは、国連に対して、2003年3月19日以降のイラクにおける大量殺戮、言論弾圧、および文化と環境破壊の実態調査を要請する。それは、以下の根拠に基づくものである。


(1)国連安全保障理事会の決議を得ていない、主権国家イラクの領土への軍隊の進攻、空爆やミサイルの投下は国際法に違反する侵略行為である。

(2)進攻にともなって、日本などの支援を受けた米英軍等によって劣化ウラン弾、クラスター爆弾、燃料気化爆弾(デイジー・カッター)、ナパーム弾など多数の非人道的大量殺戮兵器が使用されており、そのことは、米軍の参謀も公式に認めている。

(3)進攻と空爆によって、数千(未だ正確な数字が分からない)の人々が殺戮され、数万の人々が家族を失い、負傷し、不虞にされ、家を失った。その大多数は民間人である。
 数百万の人々が生命の危機に脅かされるだけでなく、病院、産院、学校のみならず、上下水道、電気などのイラク各都市のライフラインが破壊されたため、人々の生活基盤と生活手段がいちじるしく損なわれた。

(4)米英軍による2万発に及ぶ各種爆弾の投下によって、広範囲にわたる大気、水域、土壌の汚染などを考えると、イラクとその周辺の環境破壊にとどまらず、地球環境そのものに対する破壊行為である。

(5)進攻にともなって、アルジャジーラ・テレビ・バクダッド支局に対する空爆とその記者の殺戮、パレスチナ・ホテルのジャーナリストたちに対する攻撃など、米英軍によってメディアに対する圧力と攻撃が意図的に行われた疑いが極めて濃厚である。これは、知る権利、言論の自由に対する侵害である。

(6)進攻にともなって、人類文明のゆりかごメソポタミア文明の貴重な遺跡、遺構が破壊されただけでなく、最古の文書や遺物が保管される図書館、博物館が火災、盗難に見舞われた。また、デイジー・カッターなど地中深く広く破壊する兵器の使用によって、未発掘の遺跡、遺構が破壊された。これは、人類に対する犯罪である。

(7)サダム・フセイン政権により行われた残虐行為、具体的には、大量処刑、拷問等の実態についての調査を併せて要請する。
 以上について実態調査を踏まえた上で、国連が、破壊と被害の規模を公表し、加害者とその責任を明らかにし、責任追及を行うことを要請する。戦争犯罪として国際刑事裁判所に告訴することも含め、このような悲劇が二度と繰り返されないように、予防処置をとることをも要請する。

2003年5月15日
社団法人 日本ペンクラブ  会長 井上ひさし