2002〜2003

「自衛隊のイラク派遣に反対する声明」

 われわれ日本ペンクラブは、平和を愛し、言論表現の自由と人権を守る立場から、これまでいくたびも、米英軍の対イラク戦争に反対し、米英軍を支援する日本政府に抗議する声明を出してきた。
しかるに、小泉政権と政府与党は、日米同盟重視を理由に、アメリカ政府の要請に応じて、近々イラクへ自衛隊を派遣しようとしている。


 われわれ日本ペンクラブは、そうした小泉政権と政府与党に対し、深い憤りをもって抗議するとともに、自衛隊をイラクへ派遣しないよう要求する。
もとより、われわれ日本ペンクラブは、米英軍のイラク戦争に反対するからといって、人々を恐怖政治で支配していた旧サダム・フセイン政権を擁護する立場ではないし、また過激派の無差別テロには絶対に反対である。

 そもそもイラク戦争はアメリカが世界の世論を無視し、国連安保理の同意を得ずに強行した無法な戦争である。戦争の「大義名分」にされた大量破壊兵器も見つかっていない。しかも、現在イラクは米英軍の占領下にあり、どこもかしこも戦場である。そのイラクへ自衛隊を派遣することは、イラクの「復興支援」にはならず、米英軍の占領統治を「軍事支援」することにほかならない。イラク人から自衛隊は米英軍の一翼を担う部隊と見なされ、必ずやイラクの武装勢力から攻撃されることになるだろう。
いまや政治家ひとりひとりの良心が痛切に問われている。

 小泉政権や国会議員諸氏は、そういう事態が起こるのを知りながら、あえて日本自衛隊の若者たちをイラクの戦場へ派遣し、血を流させるつもりなのか?
われわれは、イラクの復興と統治は米英軍によらず、国連の支援の下、イラク国民自身の手によってなされるべきであると考える。

 暴力とテロの応酬からは、決して平和は生まれない。日本政府は自衛隊をイラクに派遣して、火に油を注ぐよりも、真に友人であるならば、アメリカ政府を説得してその矛を収めさせ、暴力とテロの連鎖を断ち切るように訴えるべきである。ベトナム戦争のように泥沼化する前に、アメリカは早急にイラクから軍隊を撤退させ、国連主導の復興に譲って、即時、イラク国民に主権を返すよう説得すべきではないか。

 敗戦後、われわれ日本国民は、他人の不幸の上に自らの幸福を作らない、二度と再び若者を戦場に送らない、と誓ってこれまで歩んできた。日本が敗戦により平和を得てから半世紀以上、日本の軍隊を海外に派兵することなく、武力を使って他国を侵略せずに今日まで来たことを、われわれは誇りに思う。

 日本ペンクラブは、小泉政権と政府与党が国民を二度と再び戦争に駆り立てないことを国民に誓い、イラクへの自衛隊の派遣を取り止めるよう、強く要求する。

2003年11月26日
社団法人 日本ペンクラブ  会長 井上ひさし