●「個人情報保護基本法制に関する大網案(中間整理)」に対する見解
日本ペンクラブはさきに、2000年4月25日付けで「『個人情報保護法』制定についての要望と意見」を、個人情報保護法制化専門委員会(高度情報通信社会推進本部・本部長は首相)へ提出し、個人情報保護検討部会の中間報告についての問題点を指摘するとともに、個人情報保護のための基本原則、個人情報公表の際の守るべき原則についての検討を求めてきた。
しかし、6月2日に発表された法制化専門委員会の「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)」は、日本ペンクラブが懸念している各点の討議が充分になされたとは考えられず、あまりにも残念な内容と言わざるを得ない。
とりわけ問題とすべきは以下の二点であり、法案化に際しては引き続き慎重な検討を強く求めるものである。
一、大綱案では「その他」項目のなかで、表現の自由、学問の自由については留意する旨を述べながら、一方において報道機関の保有する個人情報を基本法の規制対象として含め、個別 的な検討のなかで扱うとしており、これには反対せざるを得ない。
そもそも、報道機関が収集・保存・報道する個人情報は、一般の民間業者が扱う情報とは異なった性格を有している。なぜなら報道活動において個人情報を伝えることは国民の知る権利に奉仕するものであり、憲法21条に保障された言論表現の自由及び報道の自由に重大な関りを持つからである。従って、これを基本法の想定する対象から除外せず、さらに、行政機関が関与する可能性のある苦情処理機構で処理することは報道機関の活動を監視、統制することになりかねず、言論表現の自由及び報道の自由の観点から大きな問題がある。
二、大綱案では「政府の措置及び施策」において、「政府の保有する個人情報については別に法律で定めるところによる」としているが、どのような法律とするかについては「既存法令を見直す」と記すのみでまったくの白紙の状態である。政府等公的機関が保有する個人情報は、公権力によって個人の意思にかかわりなく収集されるものであるから、民間の個人情報以上にその保護措置の具体的拡充が求められているにもかかわらず、自己情報訂正権の保障、保有情報すべてへの対象情報の拡大、裁判所・国会等の対象機関の拡大等は、いずれも先送りもしくは検討外とされており、今後、具体的にどのような見直しがなされるのか、きわめて不透明であるといわざるを得ない。
公的機関が保有する個人情報に関しては、民間情報以上に明確な規定が必要であり、また自己の情報については、完全なコントロール権が保障されるべきである。
2000年6月15日
社団法人 日本ペンクラブ
会長 梅原 猛


