●日弁連の人権救済機構の設置法試案への反対声明
日弁連(日本弁護士連合会)は去る十月五日、六日に開いた第四十三回人権 擁護大会において、人権救済機構を設立するよう提言している。だが、同大会シンポジウムの実行委員会が発表した人権救済機構を設立するための法案要綱 試案には言論表現の自由を脅かす重大な問題が含まれており、日本ペンクラブはこれを看過することができない。
問題点はつぎの部分である。
第一に人権機構は行政組織であること。独立行政委員会といえども公正取引 委員会と同様に現行法では政府の行政組織に組み込まれ、強大な調査権限を持 つことになる。
要綱試案はメディアによる人権侵害問題も、この人権機構に取り扱わせるこ ととしている。メデイアによる名誉毀 損、プライヴァシー侵害の状況は放置できないが、しかし、行政権力が介入することもまた許してはならない。メディ アによる人権侵害問題については、日弁連自らが提唱している報道評議会など自主自律の規制組織(プレスオンブズマン)の設立が望ましい。独立行政委員 会として強大な権限を持つ人権機構が、報道機関や作家、評論家、フリージャーナリストによる名誉毀 損、プライヴァシー侵害問題を取り扱うことになれば、 言論表現の自由が侵される。
人権と社会正義を標榜する日弁連の人権大会シンポジウム実行委員会がこの ように言論表現の自由を危うくする法案要綱試案を発表したこと、人権大会の宣言をめぐって修正動議が出されるなど白熱した討議があったにもかかわらず 要綱試案の危険性を完全には払拭していないこと、日本ペンクラブはこうした事実に率直な驚きと憂慮を表明せざるを得ない。
法務省人権擁護推進審議会は、十一月下旬には現行の人権擁護委員制度を見直し、新しい人権機構のありかたについて中間答申を発表する。その際、人権 機構に関する日弁連の見解は多大な影響力をもつ。日本ペンクラブは、法務省人権擁護推進審議会の人権機構の設立をめぐる討 議が言論表現の自由をはじめとするすべての人権にとって障害になることのないよう、重大な関心を寄せている。日弁連にはその責任に鑑み、内外から批判 の集中した法案要綱試案を撤回するよう強く求めたい。
2000年10月16日
社団法人 日本ペンクラブ
会長 梅原 猛


