●著作者の権利への理解を求める声明
一冊の本が書店で読者と接するまでには、まず著作者がいて、さらには編集者、校正者、装幀者の協力があり、そして印刷、製本、取次業者とさまざまな人びとにリレーされる道程がある。書店に届くまでに定価のほぼ八割のコストが分担されて振り分けられている。そのなかに著作者の知的所有権としての著作権料が含まれている。
ところが最近、こうした著作者等の権利を侵害する動きが顕著になっており、日本ペンクラブは深い憂慮の念をいだいている。問題は、新古書店と漫画喫茶の隆盛、公立図書館の貸し出し競争による同一本の大量 購入、である。
新古書店とは、従来の古書店と異なり新刊に近い古書を廉価で売る大規模店の意味で、急速に売上げを伸ばしつつある。制作コストを度外視し成立している新古書店は売上げの75パーセントが粗利と推定される。著作者権料を含めた制作費、流通費が省かれているからで、本は新古書店と読者の間を行ったり来たりする構造により一種の貸本屋的な機能を果 たすかたちで成長している。
B定価に換算すると漫画本で1300億円、一般書で500億円相当分が、一年間で新古書店に奪われていると同会は見積もっている。日本の書籍に市場(雑誌を除く)は年間約一兆円であり、このままで推移するとその20パーセント近くが著作権料を支払わない新古書店で売買されることになる。
漫画喫茶は、友人同士の回し読みとは違い、営利を目的として利用者の回覧に供するもので、著作権侵害の恐れがある。また、公立図書館の同一作品の大量購入は、利用者のニーズを理由としているが、実際には貸し出し回数をふやして成績を上げようとしているにすぎない。そのことによって、かぎられた予算が圧迫され、公共図書館に求められる幅広い分野の書籍の提供という目的を阻害しているわけで、出版活動や著作権に対する不見識を指摘せざるを得ない。
いかなる時代でも書籍が読者の手に届きやすくするための努力は続けられるべきだが、著作者が継続的に生産活動を続ける基盤を奪うことは断じて許されない。日本ペンクラブは、著作権に対する幅広い理解を訴えるとともに、今後、著作権法の改正等を視野に入れながら著作者の権利と日本の文化活動を守るための主張と行動を続けるつもりである。
2001年6月15日
社団法人 日本ペンクラブ
会長 梅原 猛


