1998〜1999

「児童買春・児童ポルノ禁止法案」についての声明

 現在、国会に上程されている「児童買春・児童ポルノ禁止法案(児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律案)」について、日本ペンクラブは言論・表現の自由との関わりから重大な関心を持っている。

 同法案が、国内外での児童に対する性的搾取及び性的虐待を処罰・防止し、児童の権利の擁護に資するものである限りその意義は認めるしかし、対象年齢を「十八歳未満」とするのは「児童」の概念から甚だしく逸脱しており、せめて義務教育年齢以下とすべきであろう。また「児童ポルノ」の内容に、「写真」「ビデオテープ」と並んで「絵という曖昧な言い方が含まれるが、「絵」には抽象画から漫画までの拡がりがあり、恣意的に判断される余地が大きい。

 「児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、若しくは公然と陳列し、又これらの目的で製造し、所持し、運搬し、輸入し若しくは輸出した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する」(法案第六条)とあるように、この法案は言論・表現活動を規制する恐れがある。猥褻物頒布等に関する刑法第百七十五条でさえ、「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又公然と陳列した者は、二年以下の懲役(中略)、販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする」とあり、「製造」「運搬」までは記していない。「製造」「運搬」を入れると、言論・表現活動における生産現場や流通過程への介入を招く可能性がある。なお「何人も、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持してはならない」(法案第八条についても、刑法第百七十五条の販売目的での所持禁止でなく対象を単純所持にまで拡げすぎているところに問題がある。

 日本ペンクラブは、拡大解釈・拡大運用ができる曖昧な条文を残したまま法案が成立することのないよう、強く要望する。

1998年11月26日
社団法人 日本ペンクラブ
会長 梅原 猛