声明文

「声明」

 日本ペンクラブは、言論表現の自由を守るために、さまざまな声明文を発表しています。「チャタレイ夫人の恋人」「愛のコリーダ」「四畳半襖の下張」などの裁判と判決への抗議、教科書検定、安保条約や刑法改正などに対する批判、国家機密法に対する反対や破防法適用に関する抗議、朝日新聞社襲撃事件や本島長崎市長襲撃事件への抗議、諌早湾干拓潮受け堤防に関する声明、書籍等の再販廃止に関する声明などがあります。
 また、対外的には、ベトナム和平を訴える声明文やあらゆる武力闘争に対する声明文を発表。各国の獄中作家の釈放要求をはじめ、獄中作家を日本ペンクラブの客員会員に選出する旨を伝える声明文をその国の大統領や首相などの国家元首宛に送付し、獄中作家の窮状と釈放を訴え続けています。

会長談話 「グーグル・ブック改訂和解案承認拒絶決定について」

ニューヨーク地裁によるグーグル・ブック改訂和解案承認拒絶決定について

「今回の決定を大筋において歓迎する。とりわけ、日本ペンクラブの提出したアミカス(意見書)を直接引用するなどして、結論として「ネット上のオプト・アウト方式」を中核とする今回の和解案が、「フェア・十分・合理的」ではないと明確に示したことを評価する。
 一方で、表現の自由の問題については判断を避けるなど、引き続き日本ペンクラブとして今後の推移を注視していく必要もある。」

2011年3月23日
社団法人日本ペンクラブ 会長 阿刀田 高

東日本大地震の惨事に際して


 日本ペンクラブは、このたびの東日本大地震の、すべての被害者に対して心からなる痛嘆を申し述べます。亡くなられた多くの方々には、ただ祈るよりほかにありません。行方不明の方々には一人でも多くの命が救済されるよう切に願っております。もどかしさばかりが募ります。

 被害地への救助もままならず、私たちに何ができるのか、会員それぞれの活動とはべつに、文筆家の団体として、あらためて惨事の真因をさぐり、長く警鐘を鳴らし続けること、それが責務であると痛感しております。とりわけ惨事を拡大した原子力発電については確かな安全性を求めてこの存在を注視し、真実を世論に訴えていきたいと襟を正しております。

 なべて一日も早く惨害の地が回復するように、また健やかな日々が戻って来るように、言葉の力を信じて声高く希求いたします。この願いは被害地だけのものではなく、日本全体のテーマでもありましょう。こぞって「がんばれ、日本」と叫びます。


日本ペンクラブ会長 阿刀田 高

東日本大震災 原発と原発事故に関する情報の完全公開を求める声明

     【東日本大震災 原発と原発事故に関する情報の完全公開を求める声明】


  東日本大震災から4ヵ月間が過ぎたが、日本の政財界の中枢は明快な復興ビジョンを打ち出せないまま、権力と権益の姑息な奪い合いに明け暮れている。この間にも、メルトダウンを起こした東京電力福島第一原発は頻々と危機的状況に陥り、東北・関東一円の各所にさまざまな放射能被害を広げている。
  しかし、震災復興や、原発事故について、もっとも事態を把握しているはずの政府と東電からもたらされる情報は、いつも部分的で、いつも楽観的で、いつも遅れている。こうした恣意的な情報をマスメディアがさらに短くリポートするとき、現実はますます曖昧になる。
 他方で、別の電力会社が原発運転再開をめぐる公開討論番組の放送に際し、社員などを動員し、一般市民を装ったメールを大量に送らせたり、また別の電力会社は原発関係の裁判の傍聴に社員などを大量動員し、批判・反対派の傍聴を妨害したりするなど、原発をめぐる異様な出来事が次々と明らかになっている。
   エネルギー政策は、一国の政治・経済・社会構造を決定するもっとも基本となる政策である。ところが、この重要課題を考えようとしても、政府や電力会社からもたらされる情報が恣意的で曖昧どころか、やらせメールや傍聴妨害等によってさらに歪められているとしたら、自由な議論、自由な民意の表出などとうてい覚束ない。
  日本ペンクラブはこうした事態を深く憂慮し、政府と東電に対し、3月11日の原発事故以来、現在にいたるまでに収集した全データと、それぞれの危機的状況に際して行った対応策とその結果についてのすべての情報の公開を求める。
  さらにマスメディアには、政府や東電が発表する情報のリポートだけでなく、あるいは今日明日の安全か危険かについてだけでもなく、読者・視聴者・市民がみずからエネルギー事情の現実を考え、未来の選択ができるような深い報道を心がけるよう望みたい。
  今日、ジャーナリズムはフリーのジャーナリストや個々の作家・詩人・批評家、映像制作者や一般市民などによっても担われている。政府と東電とその他の電力会社には、これらさまざまな立場の表現者が、原発施設とその周辺への立ち入りも含め、自由な取材活動を行えるような受け入れ体制を早急に整えるよう要請したい。日本のあらたな民意を形成するためには、多様な言論空間を作り出すことが欠かせないからである。

2011年7月15日


                              日本ペンクラブ
                              会長 浅田次郎

日本ペンクラブ声明 「私たちは大阪府教育・職員基本条例案に反対します」

「私たちは大阪府教育・職員基本条例案に反対します」

 教育は息の長い仕事です。多種多様な人間を育み、それによって社会と世界を豊かにする仕事です。
 そこから「常に世界の動向を注視しつつ、激化する国際競争に対応できる」人も生まれてくれば、「そんな目先のことより、自然や文学や歴史のほうが面白い」「自分の暮らしや趣味や家族のほうが大切」という人間も育ってくる。いずれにしても教育は、人間をひとつの型やルールにはめ込んで管理するものではありません。
 さて、大阪府の橋下徹知事が代表を務め、府議会の最大会派である大阪維新の会は九月二十一日、「大阪府教育基本条例案」と「同職員基本条例案」を議長に提出しました。同様の内容の条例は、大阪、堺両市議会にも提出予定と報じられています。
 その案は多岐にわたりますが、こと教育に関して中心となるのは、知事が教育目標を定め、その下の教育委員会―校長―教職員を指揮命令系統のように序列化し、そこから外れると見なした教職員を一律に排除することでしょう。この条例が成立すれば、例えば学校行事では起立して君が代を斉唱する、というような職務命令に三回従わなかったり、勤務評定が二年連続して悪かった教職員をほぼ機械的に免職できるようになります。
 これはまるで工場の品質管理です。工業製品であれば一定の品質確保は大事ですが、それが人間に向けられると、不適格とされた人が生活を奪われるだけでなく、教育の場に均質の教職員だけが残り、均質の教育が行われ、均質の子供たちが育ってくることになる。果たしてそんなことで、「常に世界の動向を注視しつつ、激化する国際競争に対応できる」人が育つでしょうか。
 失礼ながら、右に二度も例示した、いささか時代がかった人物像は教育基本条例案前文から引用させてもらいました。この前文に他の人間像についての言及がまったくないところに、まさに指揮命令系統や規律・規範好きにありがちな、人間や世界についての均質な見方がすでに現われています。
 日本ペンクラブは平和を願い、言論・表現の自由を何より大切にする文学者や文筆・編集関係者の集まりです。私たちの思想信条はさまざまですが、思想信条によって人が序列化されたり、差別・弾圧されたり、また職場や地域や国から追われることには、これまでも反対してきましたし、これからも反対します。
 よって私たちは、大阪府教育・職員基本条例案に反対します。

           二〇一一年九月二十六日
日本ペンクラブ会長        浅田次郎
同 言論表現委員会委員長  山田健太

「秘密保全に関する法制の整備についての意見」

宛先)内閣官房内閣情報調査室「意見募集係」御中

 

「秘密保全に関する法制の整備についての意見」

 

2011年11月30日

社団法人日本ペンクラブ

 

 現在の日本社会において総合的な秘密保護法制は要らないし、むしろ作るべきではない。これが、日本ペンクラブの結論である。以下は、その理由であって、同時に今回のパブコメで提示された法制度への意見である。

 

(1)総論

 いま、政府に問われているのは、秘密保全ではなく、情報の開示であり説明責任の履行といった情報公開法制度の強化である。東日本大震災以降、とりわけ原発・放射能情報にかかわる政府の態度は、一貫して情報隠しであり、情報統制である。これに対し、一般市民からの強い批判を受けてもなお、再臨界可能性をめぐる東電の情報開示を性急で不正確な情報の公開として非難し、各電力会社への賛成意見工作(公聴会等でのやらせの強要)についても、その事実を認めなかったり、場合によっては開き直る態度を示し続けている。こうした状況の中で、さらなる秘密保護のための法律を新設するなどということはあってはならない。

 そもそも現代の民主主義社会における政府(国家)は市民の信任と合意なしには存立し得ないものであり、市民は政府の保有する情報を最大限に閲覧・活用し、政府の適否を判断する権利を有する。この初歩的原則を等閑視し、市民社会とは別個に国家の存在があり得ると想定する今回の法制整備の考え方には、民主主義成立の歴史的経緯に対する根本的無理解があると言わざるを得ない。

 

(2)立法事実

 有識者会議の報告書(参考資料)で立法の理由として挙げる尖閣ビデオについては、すでに非公知性や実質秘性について疑義が出され、真に守るべき秘密であるかどうか議論があるところである。警視庁公安情報にいたっては漏洩元と見られる行政機関がいまだにその存在を正式に認めていない。さらに報告書が示した過去10年程度の漏洩事例を見る限り、現行の公務員法等で規定する守秘義務で十分にカバーしうるものであって、新規に法律を必要とする理由付けはきわめて希薄であって説得力に欠ける。

 

(3)秘密の範囲

 今回示された法律案では、防衛情報のほか、外交・秩序維持など幅広い対象で政府情報全体を秘密のベールで隠そうとしている。そもそも、ここで保全しようとする秘密とは何か。これまでも何度か秘密保護法制を設ける議論がなされた。1970年代の刑法改正や、1980年代の国家秘密保護法がその具体的なかたちである。しかしそこでも多くの場合、防衛秘密を中心として、その関連で外交秘密を含めて秘密の範囲としてきた経緯がある。このうち、防衛秘密に関しては、自衛隊法の改正や、米軍秘密に関する協定を含む現行法制において、十分に秘密の維持がなされていると考えられ、強化を改めてする意味は存在しない。

 外交秘密については、まさに沖縄密約情報公開訴訟で政府の対応が問題になっているところであって、むしろ、情報公開法や文書管理法の強化・充実によって、日本においても公文書の保存や公開を制度上確立することが先決である。それなしに、秘密の範囲を外交情報にまで拡大することは、重大な外交に関する政府の行為に関して国民による検証を不可能とするものであって許されるものではない。しかも、その秘密決定権者は行政機関の長すなわち大臣となることが想定され、省庁において安易に秘密指定され、秘密の件数が格段に増大することは、自衛隊法改正によって秘密指定権者を総理大臣から大臣にしたことによって防衛秘密が急増した状況からも明らかである。

 また、突如として「公共の安全及び秩序の維持」に拡大することによって、政府が保有する情報についてきわめて広範に秘密の網をかぶせることになると想像される。福島第一原発事故をめぐっては、政府や関係省庁が発信する情報は、直接的に私たちの健康、ひいては生命そのものにかかわるものでありながら、透明性にも信頼性にも欠け、私たちの不安をますます増長させている。国家によるエネルギー政策を守ることが公共の安全を守ることに優先するとは思えない。このような状況下で「公共の安全」を秘密の対象として行政が非公開を判定しようとすることについて、拡大解釈や恣意的運用を疑うなという方にこそ無理がある。

 

(4)情報取扱者

 さらにこの法案の問題点としては、秘密の取扱者に対する適性評価基準があいまいであって、調査項目にいたっては家族にまで調査の範囲を広げ、個人の尊厳に踏み込むなど、評価対象者が差別を受けかねないものである。また罰則化や法定刑をこれらに加えることなどを考えると、流出した情報が公益にかなった場合であっても、通報者はまったく保護されないことになり、せっかく法制化された内部告発者保護法(公益通報者制度)を骨抜きにする恐れがある。

 

(5)罰則

 重罰化による威嚇効果によって、情報の漏洩を防止するという考え方が示されている。しかし米国の例を見ても、重罰にしたからといって漏洩が防げるというのは幻想に過ぎない。実際、過去の漏洩事例をみても、刑事罰の上限に届くようなものは存在しない。

 

(6)知る権利

 今回の新法制度が「国民の知る権利」を侵害するものではないとわざわざ断り書きをつけ、その理由として立法によって指定される秘密はそもそも情報公開法の適用除外であって対象ではないという。しかし現実には、沖縄密約情報公開訴訟や現在進行中の原発行政でも明らかなとおり、まさに政府の恣意的な秘密指定がいま問題になっていることに、何の反省も配慮もないことが明らかである。また、外務省沖縄密約事件(西山記者事件)を例に、正当な取材行為は保護されるというが、その最高裁判決によって守られたのは抽象的な「総論」としての取材の自由であって、実際に記者は逮捕され、その後も一貫して政府は文書の存在を認めないばかりか、秘密文書は秘密裏に破棄された可能性が指摘されている。

 要するに、取材の自由は具体的に守られなかったのである。実態を直視せず、自由は守られていると強弁する政府が作る秘密保護法を、日常的な取材を業とする私たちは断じて信頼できない。しかも、今回の法制度は新たに特定取得罪という名の「探知罪」の導入を提案している。これは戦前の軍機保護法における探知収集罪への回帰にほかならず、こうしたスパイ罪を戦後の日本が持ってこなかったのは、戦中の苦い経験からである。この点は、1980年代の国家秘密保護法案が上程されたときに充分議論され、この種の法制度を導入しないことを確認したはずではなかったのか。

 

以上

 

「新型インフルエンザ特措法」に反対する緊急声明

「新型インフルエンザ特措法」に反対する緊急声明

 

 政府は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を三月六日に閣議決定し、今国会での成立をめざしています。
 しかし、その内容は、感染症対策に名を借り、国民の基本的人権、移動や集会の自由、言論・表現の自由を一方的に制限するなど、あまりに重大な問題を含んでいます。要綱段階で出された反対意見を踏まえ、法案では一部文言の修正がはかられましたが、法案が有する問題点はまったく解消されていません。
 例えば、同法案は、世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの流行を確認した場合、首相が緊急事態宣言を発することができるとし、都道府県知事に対して、住民の外出制限、公共・商業施設の使用制限、集会等の中止を求める権限を与えています。さらに、住民に対して強制的な予防接種も行えるとしています。
 これは、事実上、超法規的な戒厳令であるにもかかわらず、この発動の要件は政令で定めるとされており、厚生労働省の一部の決定のみで私たちの生存と権利と自由を制限することを可能としています。
 新型インフルエンザへの対応は不可欠ですが、誰もが当事者となりうる事態に冷静に対処するためには、危険性の実態や進行の段階、その対処の仕方など、確実で透明性の高い情報の公開が必要であることは、先の福島第一原発事故の教訓であったはずです。その際に見せた〈政〉と〈官〉の不手際を検証もせず、いたずらに危機感をあおり、危機管理対策のみを突出させた本法案を制定することは、新型インフルエンザの対策にならないばかりか、民主主義の諸原理を蹂躙するものと言わざるを得ません。
 日本ペンクラブは、政府がこの法案を撤回し、国民が新型インフルエンザ対策として熟議し、合意形成できる内容に根本的に改めるよう、強く要望します。
  

                                             ニ〇一ニ年三月三〇日

                 日本ペンクラブ会長 浅田次郎

日本ペンクラブ声明「国民皆番号法案は民主主義と市民の自由をおびやかす」

政府はいま、「社会保障と税の一体改革」の一環として、国民皆番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)を制定しようとしている。

これは、これまで国と地方自治体が所管ごとに収集してきた市民一人ひとりの税や社会保障に関する個人情報を、行政の効率を上げるためとして、住基ネットをベースに一元的にコンピュータ管理し、行政機関内で容易に利用できるようにしようというものである。

私たちは以前から住基ネットと個人情報保護の法制について、言論表現の自由の制約や市民的自由の萎縮につながることへの懸念を表明してきたが、実際、この二つが制度化されて以来、社会全体に「過剰反応」と言われるような雰囲気が醸成され、極端な匿名化が進む一方で、取材や学術調査に多くの困難が生じるようになった。

こうした弊害を放置したまま、その上に行政機関がよりセンシティブな個人情報を容易に利用できるようにする今回の法案の問題点は明らかである。

第一に、個々人の収入や税、疾病や介護といったプライバシーや内面にも関わる情報が行政機関によって一元的に収集・管理・利用されることの気味の悪さである。個人が個人である最低限の条件とも言うべき秘密を、行政の効率化のためにないがしろにすることは、今日の個人の尊厳と民主主義の否定と言わなければならない。

第二に、行政がこれらの個人情報を利用する目的が厳密に規定されていないため、目的外に使用される危険性が懸念されることである。

第三に、個人が自己に関する情報にアクセスする方法が閉ざされているため、その正確さを確認したり、間違っていた場合の変更要請もできないことである。OECD(経済協力開発機構)はこうした自己情報を自分で管理する権利を定めるよう求めているが、現在の法案はこの条件を満たしていない。

第四に、広範かつ詳細な個人情報の一元管理が社会にもたらすいっそうの萎縮効果と匿名化について、まったく顧慮されていないことである。先の個人情報保護法の制定後、政治家や公務員等の公的人物がこの法律を盾に情報提供や取材を拒否することが急増し、活発な報道・言論表現活動がしにくくなっている現状を考えれば、これはこの国の民主主義の将来をいっきに危うくする制度にもなりかねない。

以上により、日本ペンクラブは現在法案化されている国民皆番号制度に強く異議を申し立て、政府と国会に対し、慎重で十分な審議を尽くすよう求めるものである。

 

二〇一二年四月十九日

日本ペンクラブ会長     浅田次郎

同言論表現委員会委員長   山田健太

日本ペンクラブ声明「大飯原発再稼動に強く反対する」

  政府はいま、関西電力大飯原発の再稼働を強行しようとしているが、日本ペンクラブはこれに強く反対する。

  そもそも東日本大震災で事故を起こした福島第一原発は、各号炉の内部に近づくことすらできず、いったい何が起き、現在どうなっているのかもわかっていない。にもかかわらず、他の原発一般について、机上のストレステストのみで安全性を確認したとする政府判断には信頼を置くことはできない。

  ましてその判断のもとになった評価を、これまで原子力規制をおこたり、数々の失敗を重ねてきた原子力安全保安院が担うということは、とうてい国民が納得できることではない。

  現在の民主党野田政権は菅前政権の脱原発方針を引き継ぎ、脱原発依存を謳ったのではなかったか。まずやるべきは、福島原発事故の検証を行い、国内の各原発をいつ、どのように廃棄していくかの工程表を具体的に示し、代替エネルギーの研究開発と実用化の道筋をつけることである。

  福島第一原発の事故は、ひとたび原発が事故を起こせば、その影響が広範囲・長期間に及ぶことを白日の下にさらした。また、同原発で溶融した核燃料はむろんのこと、一般の原発から必然的に排出される膨大な「核のゴミ」についても、十万年ものあいだ安全な場所に隔離しておかなければならないことも広く知られるようになった。こうしたことを併せ考えれば、再稼働をめぐる判断は、政権の一部や原発立地の一自治体のみでなされるべき問題でないことは明らかである。

  日本ペンクラブは、言論・表現の自由、戦争と平和、地球環境に深い関心を寄せる作家・表現者の集まりであり、シンポジウムや編集出版などを通じて、脱原発・反原発の意思を表わしてきた。

  私たちは現政権が進める大飯原発再稼働方針に反対するとともに、その姿勢をただちに改めるよう強く求める。

 

二〇一二年四月二十日

 

日本ペンクラブ会長   浅田次郎

同 環境委員会委員長  中村敦夫

同 平和委員会委員長 高橋千劔破

 

日本ペンクラブ声明「大飯原発再稼働決定に反対する」

 野田首相は先ごろ、関西電力大飯原発三、四号機の再稼働を決定した。これは、福島第一原発の危険がつづき、事故原因の究明も覚束ないなかでの政治判断である。
 各種世論調査でも明らかなように、国民の過半数はいま、いかなる原発再稼働も望んでいない。今夏の節電にも協力しよう、と電力消費地の四人に三人までが答えている。
 首相は「国民生活を守るため」と言うが、「国民」とは誰のことなのか。誰の利益を守ろうというのか。
 首相は、計画停電や突発的な停電によって、あるいは電力料金の高騰によって「命の危険にさらされる人」「働く場のなくなる人」が出る、「日常生活や経済活動が混乱する」と言う。しかし、いまやどの医療機関にも自家発電装置がある。また、企業や経済や日常生活に仮に混乱が起き得るとしても、原発の危険性はその規模と質において、これらを何百倍、何千倍も上回ることは、すでに福島第一原発事故が明らかにした。
 結局、野田首相の決断は、根拠のない「原発安全神話」を蒸し返し、政府・電力会社・関連業界と一部の専門家による隠微な「原子力ムラ」を生き延びさせ、「原子力マネー」漬けになった原発立地自治体の自治能力を腐食させることでしかない。
 そのための隠れ蓑として、国民を持ち出さないでもらいたい、と国民のひとりとして私たちは思う。もし首相が「原子力ムラ」とそこに連なる人々を国民と言いたいなら、私たちをそこに含めないでいただきたい。
 いま野田首相がやるべきは、福島第一原発事故の原因を究明し、そこから教訓を引き出し、首相みずからが宣明した脱原発依存の方針に基づいて、国内の原発をいかになくしていくかの工程表を具体的に明らかにするとともに、代替エネルギーの研究と実用化を促進することである。それなしに大飯原発三、四号機の再稼働を指示することは、破綻した旧来の原子力政策をなし崩し的に温存させることにしかならない。
 日本ペンクラブはこれまでも種々の活動や声明を通じて、核兵器開発と原発依存のエネルギー政策に反対の姿勢を明らかにしてきた。私たちは今回の野田首相の民意を無視した反民主主義的な「判断」についても、強く批判し、撤回を求めるものである。


 二〇一二年六月十八日
                日本ペンクラブ会長      浅田次郎 
                同 環境委員会委員長   中村敦夫
                同 平和委員会委員長  高橋千劔破

日本ペンクラブ声明「シリアにおける日本人ジャーナリスト殺害に抗議し、戦闘の停止、政治犯の釈放を求める。」

                日本ペンクラブ声明

     「シリアにおける日本人ジャーナリスト殺害に抗議し、

             戦闘の停止、政治犯の釈放を求める。」

 

8月20日、シリア・アレッポ市近郊においてビデオジャーナリスト山本美香氏が銃撃され死亡した。山本美香氏は、常に紛争の現場から、女性・子ども・民衆の視点で、映像を通して戦争の悲惨さを告発し続けてきた。日本ペンクラブは有能なビデオジャーナリストであった山本美香氏の死を悼むとともに、激化する戦闘の即時停止を求める。

シリアにおいては、外国人を含む多くのジャーナリストが殺害、もしくは身の危険にさらされ、また民間多数の犠牲が伝えられ、多くの避難民も生まれている。

日本ペンクラブは、政府・反政府側の双方に対し、戦闘の停止を呼びかけ、あわせて政治犯として捕らわれている作家・ジャーナリストの即時釈放を強く求める。

 

                2012年9月7日

 

社団法人 日本ペンクラブ

会長 浅田次郎

国際委員長 西木正明

獄中作家・人権委員長 西木正明

 

 

「Google社との図書館プロジェクト(グーグルブック検索サービス)に関わる事項についての話し合い開始について」

 

  社団法人日本ペンクラブ(会長浅田次郎)は、Google社(以下グーグル)から提案があった図書館プロジェクト(グーグルブック検索サービス)に関わる事項について、話し合いを開始することにつき、1015日受け入れることを決定した。

 

  話し合いにあたっては、グーグルが今後、日本国内において出版関連活動を行なうにあたって、出版の多様性確保や日本の出版文化・慣行の尊重を含めた言論・表現の自由についての基本姿勢、過去及び将来にわたってグーグルが所有あるいは所有する可能性がある書籍のスキャニングデータの扱いなどについて、双方の基本的立場を尊重しつつ、実効的な前進が見られるよう交渉に応じる用意がある。

 

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日本ペンクラブ声明 「米国の臨界前核実験に抗議する」

日本ペンクラブ声明

米国の臨界前核実験に抗議する

 

 アメリカ政府エネルギー省核安全保障局は12月6日、臨界前核実験をネバダ

州の核実験場で行ったと発表した。これは昨年2月以来、27回目の実験だとい

う。核爆発を伴わないとはいえ、これらの実験が核戦争を前提とし、より破壊

力と殺傷力の高い核兵器の開発を企図したものであることは明らかである。

 人類は米国による広島、長崎への原爆投下がもたらした巨大な惨禍を経て、

核兵器の非人道性を知ったのではなかったか。オバマ大統領自身、就任直後の

2009年4月にプラハで行った演説において、「核なき世界をめざす」と謳い

上げたはずである。さらに私たちは、昨年3月の東日本大震災と福島第一原発

で相次いだ深刻な事故を通じて、核エネルギーの危険性と制御不能性をあらた

めて思い知らされたばかりである。

 先のプラハ演説の格調の高さゆえにノーベル平和賞を受賞し、アメリカ合衆

国の国民に信託され再選された直後のオバマ大統領が今回の臨界前核実験を認

めたことに対し、私たちは深い失望と強い怒りを感じている。これは原爆であ

れ、原発であれ、人間が核エネルギー幻想に埋没していく道であり、全ての生

命の存続を脅かすものである。

 日本ペンクラブは今回の実験に抗議し、以後、このような実験を行わないよ

う、アメリカ合衆国政府に強く求める。

 

                                   2012年12月8日 

 

                                     社団法人日本ペンクラブ       

                                   会長        浅田次郎 

                             平和委員会委員長 高橋千劔破

                              環境委員会委員長 中村敦夫 

 

 

 

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日本ペンクラブ・Google 共同声明「日本ペンクラブとGoogleは、図書館プロジェクトに関する著作者の懸念を解決し、協力関係を構築することで合意しました」

20121217

 

日本ペンクラブ・Google 共同声明

 

「日本ペンクラブとGoogleは、図書館プロジェクトに関する著作者の懸念を解決し、協力関係を構築することで合意しました」

 

 日本ペンクラブとGoogle は、本日、「Google 図書館プロジェクト」においてデジタル化された日本語の作品、および将来においてデジタル化される可能性がある日本語の作品の利用について、双方の基本的立場を尊重しつつ、建設的な協力関係を構築していくことについて合意しました。

 

 Googleの図書館プロジェクトでは、米国の図書館においてデジタル化された書籍に、著作権保護期間内の日本の出版物が含まれていますが、そのことについて日本の著作権者から懸念が示されていました。本日の合意はこの懸念を解決し、協力関係を構築する出発点となるものです。

 

 同合意の中には、Google ブック検索でユーザーが検索した際に、表示されるスニペット(数行の抜粋表示)を、今後、日本ペンクラブに所属する著作者もしくは当該作家の書籍を出版する出版社(以降、著作権者)から要請があった場合には、速やかに Google が削除するという項目が含まれます。また、作家、出版社から除外登録をうけた書籍については、今後の図書館プロジェクトでの新たなスキャニングの対象から除外します。

 

 Google では、図書館プロジェクトの開始当初から、著作権者から通知を受けた場合に、スニペットを削除、またはスキャニングから除外する対応を行なっていましたが、ここに改めて、Google の責任においてこれらを確実に実施することを確認しました。またGoogleは、Googleが保有するデータを、最善の方法と責任をもつて管理することは言うまでもありません。これらにより、日本ペンクラブは、Google による著作物の利用について、著作者によるより広範なコントロールが実現されると考えます。

 これとは別に、Googleは、著作権者からの要請がある場合に限り、スキャンされたデジタルデータを利用してGoogle Play上で電子書籍を販売する仕組みを提供します。

 

 他方、日本ペンクラブとGoogleは、図書館プロジェクトに関連して、今後、法的手段をもって争わないことを約束し、日本ペンクラブの会員が、今回決めた両者の合意に疑義を呈した場合においては、会員に対し理解を求めるよう努力します。

 

 さらに、今後、出版流通の多様性の確保をはじめ、日本における言論・出版・表現の自由の維持・拡大に貢献することを目的に、日本ペンクラブと Google は、現代日本文学その他の翻訳及び普及事業を実施する予定です。

 

 今回の合意が、日本の豊かな出版文化のもとで生み出される数多くの書籍を、日本はもとより世界中の読者により広く届けるための一助となることを期待しています。


日本ペンクラブ声明「北朝鮮の度重なる核実験に抗議する」

 

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、2013年2月12日、周辺諸国の人々の懸念と平和への願いを無視し、第三回目となる核実験を強行した。

 

日本に暮らす私たちは、広島、長崎の悲劇を体験し、2011年3月には福島第一原発の事故により、核エネルギーの危険性と制御不能性を思い知らされた。これらの体験も踏まえ、日本ペンクラブは一貫して全ての核実験、核兵器に反対してきた。

この立場から、これまで北朝鮮が行なった二回の核実験に対しても、また米国が4ヵ月前に行なった臨界前核実験に対しても、私たちは強い抗議の意志を表明してきた。

これらはいずれも、一部の政治的・経済的強者が、究極的には人間が制御できない核エネルギーをもてあそび、すべての生命の存在を脅かすものにほかならない。

 

 あらためて日本ペンクラブは、今回の北朝鮮による核実験に強く抗議するとともに、世界のすべての人々が共に手を携え、平和的な手段により、地域の平和化、核非武装化のために行動することを訴える。

 

                   2013年2月13日                      

 

社団法人日本ペンクラブ  会長           浅田次郎   

          平和委員会委員長  高橋千劔破

      環境委員会委員長  中村敦夫    

「新型インフルエンザ対応に関し政府の取り組みの見直しを求める声明」

新型インフルエンザ対応に関し

政府の取り組みの見直しを求める声明

 

日本ペンクラブは、2011年の新型インフルエンザ特措法の審議に際し、甚大な被害をもたらす可能性がある強毒性新型インフルエンザの危険性を十分に認識し、国が十分な対応をとることを求めた。そしていま、同法が施行されるに至り、いまだ住民の安心・安全が十分に守られる体制が準備されているのか、強い不安を禁じえない。したがって改めて、以下の項目につき、国の積極的かつ迅速な対応を求めるものである。

 

1. 法は、強力な人権の制約条項を含む。メディアに対する取材・報道に関する要請が指定公共機関制度等を通じてなされる予定であるが、具体的には何を予定しているのか、集会の自由についても、全面的に規制の対象となっているが、たとえば公民館の貸し出しや図書館利用など、どの範囲でどのような強制力を伴う規制を予定しているのか、等の運用上の指針を速やかに示すことを求める。最長2年間にわたり表現活動が事実上ほぼ全面的に規制されることは、憲法上許されない。

 

2. 法は、全国民に対するワクチンの接種を準備するとしている。この場合、接種を希望しない住民に対し、地方行政上、一切の不利な取扱をしないことを明らかにすることを求める。たとえば、当人も含め家族の中に未接種がいても、学校や職場への立ち入りに関しては一切の区別を設けないことをさす。また逆に、接種を希望する者については、人種・国籍や滞在の種別等によることなく(たとえば不法就労者も含め)、日本に滞在中の何人に対しても、一切の区別なく接種を行なうことを求める。そのためのワクチンの準備は、現在の計画では十分なものとは言えず、早急な計画の見直しと強化を求める。

 

3. 法は、ほとんど審議もなく、問題点が十分国会の場で議論されることなく成立した経緯を有する。さらにこれまで、有識者会議において、法の具体的な運用が検討されてきたが、現状の内容では、人権侵害のおそればかりでなく、プレパンデミックワクチンの扱いに関しても、非現実的で無責任なものとなっている。このままでは、現実にパンデミックが発生した際、全く対処不能の混乱におちいることが予測される。もう一度内容を見直し、公正で現実的な運用方針の策定を求めるものである。

 

2013315

 

社団法人日本ペンクラブ

会長 浅田次郎

環境委員長 中村敦夫

言論表現委員長 山田健太

2013
2012