●日本ペンクラブ・メールマガジン「P.E.N.」 第69号 2009年10月6日
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目次
1)2期目に入った日本ペンクラブ阿刀田高会長に聞く
2)グーグルブック検索訴訟の和解案に対する異議申し立て
3)シンポジウム「日本版デジタル・アーカイブを構想する」報告
4)アウン・サン・スー・チーさんの有罪判決に抗議する声明
5)「電子文藝館」のご案内
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■2期目に入った日本ペンクラブ阿刀田高会長に聞く
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阿刀田高会長は2007年5月に井上ひさし前会長のあとを受け、第15代会長に就任しました。1期目には世界P.E.N.フォーラム『災害と文化』を開催。来年9月には、国際ペン東京大会が、井上 靖第9代会長の下で行なわれて以来、実に25年ぶりに開催されます。2期目に入った阿刀田会長の采配が期待されます。阿刀田会長に2期目の抱負と国際ペン東京大会への取組みについて聞きました。
(インタビュー・清原康正会報委員長、相澤与剛広報委員長)
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●世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」の開催
──阿刀田会長が1期目に会長に就任しとき、「ゆるやかな反体制と良心と良識にかけて。それが会長としての、私の心積もりです」という決意表明を述べられましたが、2期目への新たな抱負を聞かせてください。
「基本的には変わっていません。会員が千数百人いる団体です。皆さんの希望するもの、意図するもの、目的がどこにあるのか、複雑で簡単にまとめきれるものではありません。『間違ったことをしないように、いろいろバランスを考えていく。それらは良心と良識にかけて』という点にしか道はないと考えています。
反体制が目的ではありません。良心と良識に従って行動しようとすれば、今の日本では時として反体制にならざるをえない。そこで、私は自分に対する心構えとして申し上げました。社会状況は変わってきています。体制とも協力し合い、いろいろな組織とも関わっていくという必要は感じています。政界財界と接したときには、新たな考えを持ちました」
──日本の情勢、世界の情勢は複雑に急激に変化しています。1期目には、会長として世界P.E.N.フォーラム『災害と文化』というプロジェクトを成功させました。1期目をふり返っていかがですか。
「日本ペンクラブの特徴は、国際ペンという機関の日本センターであるという点です。その面では他の文芸団体とは違います。海外との取組みや交流が必要です。海外との接触は口でいうほどやさしくない。あまりにも相手が大き過ぎますからね。
世界P.E.N.フォーラム『災害と文化』という企画を立て、全労済という組織が資金的にバックアップしてくれた。それも成功の大きな理由だったと思います。災害というテーマの下で、アジアとの協調がポイントでした。中国やタイ、インドネシア、サモアなどからも参加があり、それなりのものができたと思っています。特に企画に携わられた方は良いアイデアを出して、全力投球でした。他のシンポジウムとは違っていました。
一般に、この種のフォーラムは学会的、学術的な催しになってしまいます。講師がやってきて壇上からわからない言葉でしゃべる。通訳が日本語で伝える。『災害と文化』は、そうでなく映像的なものや弁士の方などにも登場していただいて、多彩なパフォーマンスをやることで、このテーマを楽しく展開できました。
"災害を楽しく"というのは適切な表現ではありませんが、何だかむつかしい話だけを聞かされたなということではなく、興味深く接することができました。それがいちばん大きな特色だったと思います。テーマが何であれ、多くの人が喜びと楽しさを感じて参会していただける。それがとても大切なことで、その方向性が見いだせたかな、と考えています」
──世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」は、各紙が新しい方向性と報道しました。
「私自身が海外のシンポジウムに参加して立派な話を聞いても、途中では眠くなるし何か退屈だったなということがありました。日本ペンクラブ会員の方ならまだしも、一般の方は退屈で眠くなるだけでは参加してくれません。その点で、世界P.E.N.フォーラム『災害と文化』は新しい試みとして成果があったかなと捉えています」
●ボランティアが支える団体として
──阿刀田会長になってから、各委員会の活動がいっそう活発になってきました。シンポジウムも増えました。
「日本ペンクラブはボランティアの団体です。会員のなかから手を挙げてくれた方を中心に活動しています。活発に活動している部分もあれば、他方では手付かずのままの部分もあります。それは残念ですけれど、ボランティア団体ですから仕方ない。
これからの2年間の任期のうち、後半には国際ペン東京大会があります。今までの各活動がこの国際大会に収斂(れん)される部分面があります。他方で、収斂できない活動もあります。大きな大会をやるとなると、とかく一つところに頭が行ってしまいます。ペンクラブが数十年単位で続けてきたルーティン(日常的な活動)にも、目配りする必要があります。双方をどう保ちながら全体として東京大会に集約していくか。この点がけっこう難しいところです」
──日本ペンクラブの活動にとって、「言論、表現の自由」という大きな問題は絶対に外せないテーマですが・・・。
「"言論、表現の自由"、"平和への強い希求、平和を守ること"は外せない問題です。極めて大きなテーマで、政治的に動いていかないと解決しないところがたくさんあります。急に何をやるということではなく、常に心のなかに持っていて、それぞれ問題が起きそうなときには鋭敏に対応していく、ということです。
鋭敏にということですが、この団体は会社みたいに、毎朝みなが出社して一堂に会している団体ではありません。理事会が開かれない月も年2回あります。鋭敏に、迅速に対応することが組織的に難しい。即応性の面では、臨機応変、ぎりぎりいっぱいのところで考えることしかできないんです」
──会員の若返りについてはいかがですか。
「若返りの面では、あまり神経質になる必要はないと考えています。30代、40代の方は自分の生活を守り、家族を養っていかねばならない。自分の人生に対する考えを実行するために、他のボランティア活動にはなかなか手が回せない。そこに過大な期待をかけると、この団体はうまく行かない。
定年を迎えられた方はボランティア的な活動でも、意義あることならばやりましょう、という姿勢が強い。幸いなことに、その力を集めるにはこの団体は非常にいいんです。50代から60代くらいの方々に期待すると、けっこう上手く回転する。井上ひさし会長の下で専務理事をやりながら、痛感したことの一つでした。ただ、若い方に会員になっていただくことは、将来の50代、60代の予備軍として大事なことです。私たちが30代、40代のころに比べて、今の方は日本ペンクラブが意図するような、社会的・国際的活動に関して意識が希薄になっています。たとえば、学生運動を見ても、明らかに違ってきています。今は学生運動なんてどこにあるんだろうというくらいの感じです。
作家は自分の作品に関して非常に熱意があります。しかし、自分の文学が社会的にどう機能するかという点では希薄になっています。こういう情勢下ですから、30代、40代の方に呼びかけても、そう簡単に会員になりましょうとはならない。これは世の中の全体が持っている空気でしょう。それだけ世の中が恵まれて安寧(あんねい)なんでしょう。もっと緊迫した状態になれば、物書きたちはもっと手を取り合うでしょうけど、今の状況ではそれほど切実に感じていない。若い方に参加してほしいと思いますけれど、基本的に50代、60代で頑張っていく団体なんだろうな、と思っています」
●2010年の国際ペン東京大会に向けて
──「言論と表現の自由のために戦う」。戦うとは大げさですが、つねにアピールしていく、それは会長自身の意志でもあるわけですね。
「そうです。日本ペンクラブが広く知られないと、同じことを言っても力にはならないんです。いろいろな活動を通じて、できるだけ多くに存在を知ってもらうことです。3月3日の『平和の日』などで地方に参ります。皆さんに訴えるのは、『どうかペンの存在を忘れずにお帰りください。どこかで我々が声明を出したときに、いつか大変おもしろいパフォーマンスをやっていた団体の人たちがこういうこともやるんだな、と心に呼び起こしていただきたい』と話しています。日本ペンクラブを知る人が全国津々浦々にいる。それをもって日本ペンクラブの一つひとつの発言が社会的な力になる、と考えています」
──2010年の国際ペン東京大会は、どんな大会にしたいと考えていますか。進捗状況、期待されることなどお話ください。
「日本ペンクラブとして、この大会は最大のもので、絶対に成功させなければならないと考えています。本会議では、国際ペンという組織が存続していくための会議が行われます。国際ペン大会は毎年開かれます。次年度の方針、会長は誰にするか、理事は誰にするかが決められます。さらには組織の問題や予算が討議されます。日本ペンクラブは本会議に関しては会場その他をお世話します。多くのセンターの一つとして参加します。
ただ、本会議だけでは文学者の集まりとしてはつまらない。日本ペンクラブとして本会議に合わせて、独自に存在感を訴える催しを行います。国際大会ですから海外から著名な作家が何人か来日します。その方々の講演があります。昨年度の世界フォーラム『災害と文化』の経験を大事にして、日本の文化やアジアの存在を訴えていきます」
──東京大会のテーマは「環境と文学」ですね。
「基本的には自然環境を中心に考えています。環境破壊の最たるものは戦争です。しかし、戦争反対をテーマに据えると、環境問題を超えた別の大きな問題になってしまう。テーマの中身があまり大き過ぎると、かえって集約が難しくなる。各国の事情も異なります。残念ながら、とりあえず主たるテーマは自然環境です。それに対して文学者は何ができるのだろうか。その問いかけをテーマにして、応える形になっていくでしょう」
──大きな国際大会です。会長としては成功が第一でしょうが、期待すること、こういう大会になるといいなという点をお聞かせください。
「多くの会員が参加して、そこに意義を見出してくれる大会でありたいです。会員以外の一般の方々にも、何か訴えるものであってほしい。具体的に言いますと、国際ペンはヨーロッパで誕生し、ヨーロッパを基軸に置いた活動を続けています。日本ペンクラブが国際舞台で何かを訴えようとしても、日本単独では訴え切れないことが多々あります。相手はヨーロッパに軸足を置き伝統を持っていますから、日本だけでは大した力にならない。どうせならば同じアジアの人たちに参加してもらいたい。ところが、なかなか難しいんです。
アジアを考えたとき、中国抜きにはできない。中国は、国際ペンに対して距離を置いた立場を取っています。他の国のペンは貧しくて、自分たちにとってよほど密接な問題でないかぎり、お金を出してまで国際大会に出て行くことはなかなかできません。東京はアジアの人々にとってそう遠くない距離です。アジアの人に参加を呼びかけて、アジアの力を結集する。そう考えていますが、なかなか難しいですね。
環太平洋という考え方もあります。アジアよりももう少し広くなって、オーストラリア、アメリカ、カナダも加わります。こうなると、かなり大きな力になる。そのときでも、やっぱり中国の参加は欠かせない。ここがネックになると、環太平洋といっても、なかなか難しいと考えています。中国に国際ペンの舞台に何らかの形で加わってもらえたら、それだけでもいいと思っています」
●「子ども本の委員会」を新設
──国際ペンのなかで、日本ペンクラブはどんな位置づけですか。
「ヨーロッパには優れた文学者がたくさんいます。しかし、それら優れた文学者が国際ペンに関わり、中枢部で積極的に動いているようには見えない。そうなると、はたから見ても、あまり魅力的ではない。国際ペンで活躍している人はいても、国に帰ったとき、そこのペンの活動は大したことがないというケースもあります。
世界のペンセンターのなかで一番きちんとした活動をしているのは日本だろうと思います。日本ペンクラブは独自の活動をしています。先月の『アジア太平洋地域会議』では、日本ペンクラブの各委員長が国際ペンの方と会っていろいろな話をしました。日本ペンクラブには7つも8つも活動する委員会があると言いますと、国際ペンの人はびっくりしていました。
委員会の話が出たので、もうひとつお話します。今年から『子どもの本』委員会を新設しました。これは私がずっと前から強く願っていたものです。国際的な会議に出席しますと、政治状況が違ったり、文化的なレベルが違ったりする国がたくさんあります。それらの格差があっても、子どもの本に関してはどの国もみな熱心です。言論弾圧が厳しい国でも、子どもには豊かな本を与えようという雰囲気はあります。まだまだ発展途上にある国でも、子どもの本には深い関心があります。
各国の方が集まったときにも、子どもの本なら共通の話題にしやすいし、入りやすいのです。アフリカの国と文学的な交流を図ったとしても、川端康成、大江健三郎というと、あまりにも意識が違い過ぎてしまう。ところが、子どもの本だったら素直に入れます。それに、絵本は翻訳が楽ですし、翻訳の必要のないものすらあります。この委員会を設けたことによって、新しい力をここに集めることができると考えています。『子どもの本』委員会は良い滑り出しで、期待しています」
──国際ペン東京大会は、会員が参加する企画もあるそうですね。
「今年12月から来年の東京大会が終了する10月までのほぼ一年間、原則として、日本ペンクラブの会員が出版するすべての本に共通のロゴと『国際ペン東京大会2010』の文字を入れてもらいます。そのロゴの入った本が出回ります。大会会場でも、記念出版物として陳列します」
──25年ぶりの東京大会について、一般の方にメッセージをお願いします。
「一つや二つは参加してみようかな、というセッションがあるかと思います。東京周辺の方はどうぞ関心を持って顔を出していただきたいです。昨年の『災害と文化』のような文学フォーラムもやります。詩人たちが自作を朗読するイベントもあります。これは日本ではそんなに盛んではありませんが、国際大会では非常に盛んです。
東京大会の全容がまだ決まっていないので、なかなか宣伝しにくいところがあります。一般の方々にも広く『環境と文学』を訴えるという催しですから、参加費はほとんどかかりません。海外から名前をいえばわかるような著名な作家にも来ていただきます。そういう方の言葉にじかに触れることも企画しています。
環境となると、発展途上国あたりで厳しい問題があります。現地で地べたを這うように活動するジャーナリストもいます。世界的には名が知られていなくても、環境問題には確かな発言を持つ方もいます。そういう方も人選します。ビックネームばかりではなく、日本では知られていなくても地に足がついた環境問題に取り組む方にも目を配る。それが大切なことだと思います。
東京大会の会場は、京王プラザホテル、早稲田大学の二つが主たるものです。まだ企画中ですが、災害関係、環境保全、環境破壊に関する写真展も考えています。昨年の『災害と文化』では、一般参加の方から、けっこう面白かったという感想をいただきました。今度の東京大会も、一般の方が参加して面白かったという大会にしたいと思います」
(構成=広報委員会 鈴木康之、穂高健一)
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■グーグルブック検索訴訟の和解案に対する異議申し立て
日本ペンクラブは、本年9月5日に期限を迎えるグーグルブック検索訴訟の和解案に対し、米国南ニューヨーク地区連邦地裁に異議申し立てを行うことを決定しました。
http://www.japanpen.or.jp/news/guide/post_196.html
http://www.japanpen.or.jp/news/guide/post_197.html
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■日本ペンクラブ・日本出版学会 シンポジウム「日本版デジタル・アーカイブを構想する」~公共基盤・民間運営・表現の自由の観点から~
去る7月27日に、長尾 真(国立国会図書館長)、秋重 邦和(大日本印刷株式会社 常務取締役)、三田 誠広(作家 日本文藝家協会副理事長)、山田健太(専修大学 日本ペンクラブ言論表現委員会委員長)の4氏をパネリストに迎え、第2回シンポジウムを開催しました。以下のページに報告が掲載されています。
http://www.japanpen.or.jp/about/cat81/post_195.html
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■日本ペンクラブでは、2009年8月12日、「アウン・サン・スー・チーさんの有罪判決に抗議し、即時無条件に自宅軟禁を解くことを求める」声明を発表しました。
http://www.japanpen.or.jp/statement/2008-2009/post_192.html
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■日本ペンクラブ「電子文藝館」のご案内
7月~8月に新しく掲載された文藝作品です。閲覧はすべて無料です。
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/
*評論・研究
関根 千佳(せきね ちか 情報のユニバーサルデザイン研究者)
『図書館サービスにおけるユニバーサルデザイン』
植村 八潮(うえむらやしお 編集者)『大学出版部はオールドファッションか』
山田 健太(やまだ けんた 法学者)『グーグル新サービスの衝撃』
*小説
穂高 健一(ほだか けんいち 小説家)『潮流』
*詩
狩野 敏也(かのう としや 詩人)『四百年の鍋』抄
望月 苑巳(もちづき そのみ 詩人)望月苑巳詩集『鳥肌のたつ場所』抄
*児童文学
マオ アキラ(まお あきら 児童文学作家)『ムシの方舟』
*俳句
松本 幸四郎(まつもと こうしろう 歌舞伎役者)『句集「仙翁花」』抄
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<<ぺんぺん草>>
来年度(2010年9月23日~29日)の国際ペン東京大会の準備が着々と進んでいます。国際ペンのいわば総会と、それに伴う会議等は英語を中心に行われ、各国代表者が集まります。この開催期間中に、メイン会場の新宿の京王プラザホテルと早稲田大学の大隈講堂ほかの様々な施設で、文学ファンの誰もが参加できる多くのイベントを企画しています。次号以下順次その内容もお知らせしていきますので、ご期待ください。(劔)
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■日本ペンクラブ・メールマガジン「P.E.N.」(毎月1~2回発行)
発 行:社団法人日本ペンクラブ広報委員会
編集長:相澤与剛 編集:鈴木康之、穂高健一
著作権:社団法人日本ペンクラブに帰属。転載厳禁。http://www.japanpen.or.jp/
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※お返事はできかねます。ご了承ください。
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