●日本ペンクラブ・メールマガジン「P.E.N.」第59号 2008年1月22日
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目次
1)「ペンの素顔」第4回・浅田次郎専務理事に聞く
2)世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」の参加申込
3)日本ペンクラブ「電子文藝館」のご案内
4)編集後記「ぺんぺん草」(高橋千劔破)
//////////////////////編集長:高橋千劔破 編集:鈴木康之 記事:穂高健一////
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■「ペンの素顔」第4回・浅田次郎専務理事に聞く
──誰もやりたがらないことは、自分が進んでやりなさい
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日本ペンクラブは07年5月に第15代会長として、阿刀田高さんを選出。同理事会
では、浅田次郎さんが専務理事として承認されました。
新体制の下で、半年が過ぎました。浅田専務理事は実務の責任者として、全体
の運営と活動に関わっています。来月22日から東京・スペース・ゼロで開催され
る、世界P.E.Nフォーラム「災害と文化」を強力に推進してきました。
他方で、このたび中国歴史小説の大作『中原の虹』(ちゅうげんのにじ)の全四巻
が完結しました。
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●世界P.E.Nフォーラムをぜひ
〔高橋〕 メルマガの巻頭インタビュー「ペンの素顔」では、これまでに阿刀田高会
長、下重暁子副会長に登場していただきました。新年第1回は、浅田次郎専務理
事にお願いします。
まず日本ペンクラブ専務理事として、一般の日本ペンクラブのファン、および会
員に向けた、現在の思いについてお話しください。
〔浅田〕 世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」ですが、もともと吉岡忍さん(常務
理事)のアイデアです。日本ペンクラブのなかで、最初に聞いたのは、ぼくだと思
います。吉岡さんと中国を旅したとき、寝台車に同室して、ずーっと夜中まで話し
ていました。吉岡さんから「こういう企画を腹蔵しているのだが......」と、その場で初
めて聞かされました。なるほどな、と思いました。ぜひやろう、とぼくは賛成しまし
た。
企画の段階では、いろいろ思慮する時間がありました。考えてみれば、人間は戦
争をはじめる前に、災害と戦っていたんです。「人間の歴史は戦争の歴史だ」とよ
く言われます。だけど、人間は戦争を始める、はるか以前から台風、地震、噴火や
嵐と闘い続けてきたわけです。人類の文化にとって、最も影響力のあるもの、最も
大きな障害、最も脅威なるものが自然だと思います。
芸術とは何か。芸術そのものは人為的な天然の模倣ですからね。人間は自然と
親和することによって芸術を生みだした。芸術からみれば、自然そのものが最も
驚異です。このように文化と災害はたいへん親密な関係にあります。今まで、こう
いうことがずっと気づかれずにきた。誰からも、テーマにあがった試しがなかった。
戦争と文化といえば、最もわかりやすい。しかし、よく考えてみれば、災害と文化
はもっと以前からあったもので、より根源的なテーマだと考えたわけです。
〔高橋〕 災害は人間に対する脅威でしたし、それに立ち向かい闘ってきましたが、
それによって人間は様々な知恵を身につけてきた。そのプラス面もありますよね。
〔浅田〕 そうです。脅威であると同時に、親和することによって、人間は進化、進歩
してきました。だから、「災害と文化」はとても意義ある企画だと思います。
〔高橋〕 世界P.E.N.フォーラムについてですが、「参加しないと、損だよ」と、皆さ
んに話してくださいますか。
〔浅田〕 東京に住む人が、災害に関してはいちばん鈍感のようです。日本の災害
の歴史をみますと、関東大震災以降、決定的な自然災害が東京に起きていない
んです。こんな場所は日本中どこにもない。ぼくら東京に住んでいるものは、自然
災害を忘れている。それだけに、東京在住の人は特に、「災害と文化」は見ておい
たほうがいい。むろん、地方の人もですが。
各地域、各職場、各学校には災害担当者がいるはずです。ほとんどの人が実感
としてわかっていないと思う。そういう立場にいる方は自分の重要な参考として、
世界P.E.N.フォーラムをぜひ見ていただきたい。
●昔に比べると七掛けの感じ
〔高橋〕 これまで理事として、日本ペンクラブに関わってこられました。昨年5月に
は専務理事に任命されて、実質的な実務責任者の立場で活動することになりまし
たが、このあたりを聞かせていただけますか。
〔浅田〕 実はね。ほんとうに困ったのは、何といっても、ぼくは小説家としてのデ
ビューが遅かった。心の準備ができていないうちに、いろいろな仕事が来るわけで
す。「小説を書け」というだけでなく、「あれもやれ、これもやれ」という他の仕事が
入ってくるのです。
ぼくはわが子に、「他人(ひと)がやりたいと言ったことは、そのひとに譲りなさい。
誰もやりたがらないことは、自分が進んでやりなさい」と小さいときから言って聞か
せていました。それだけしか、子どもには教えていません。
ぼくが子どもに言っていたことが、わが身に振りかかってくるとは思ってみません
でした(笑)。専務理事に任命された以上は、日本ペンクラブの仕事も進んでやろ
う、と決めました。
〔高橋〕 専務理事は全体を総括しなければならない、一番たいへんな位置にいま
す。2月には世界P.E.Nフォーラム。その先にも、日本ペンクラブが世界的なイベ
ントに関わる可能性がありますよね。
〔浅田〕 できるかぎり、頑張らせていただきます。ぼくは小説家としてキャリアがま
だ浅い。何もわからないうちに、専務として率先してやる羽目になりました。その
意味では至らぬ点も多々あるかと思います。どうかご寛恕(かんじょ)くだされば、
幸いです。
〔高橋〕 このメルマガの読者はほとんど文学ファンの方々です。それに会員です。
メッセージをいただけますか。
〔浅田〕 ぼくはもう歳だ、もう歳だと思っていました。しかし、日本ペンクラブの役
職についてみると、「若い」ということがよくわかりました。ペンクラブの会員には高
齢の方も多い。ただ、自分の年齢は信じないほうがいいですね。
ぼくたちが若いときに考えていた60歳、70歳は、いまの60歳、70歳とは決定的
に違います。たぶん七掛けの感じですね。全員がそうです。20歳も昔に比べると
七掛けです。
〔高橋〕 メルマガの読者の方も、齢にめげたりしないで、活躍してほしい、という
メッセージですね。
〔浅田〕 そういうことです。ぼくはいま56歳ですが、「56歳」にはすごく疑いを持って
います。考えてみると、親や祖父は56歳のときはものすごく老けていた。その分、
自分は愚かですが、愚かな分だけ肉体的には若いわけです。いろいろなことがで
きるわけです。これからも、まだまだ40歳くらいの感じで頑張っていきます。
〔高橋〕 とても、いいお話ですね。皆がやりたがらないことを率先してやろう。その
ためには年齢など関係ない。昔に比べたならば、50歳、60歳はまだまだ若い。こ
んなにもできると、専務理事は身をもって日本ペンクラブで、実践なさっているわ
けですから。
●専務理事という仕事
〔鈴木〕 一般の人には、日本ペンクラブの専務理事という立場がわかりにくいと思
います。具代的にはどういう地位で、どういう仕事をしているのでしょうか。
〔浅田〕 ぼくもよくわかっていない(笑)
〔高橋〕 会長がいて、副会長がいて、全体の実質的な総括者が専務理事です。会
長の意を受けてやっています。専務理事を助けるために、常務理事たちがいます。
ここまでが執行部で、執行部会があります。会社でいえば経営者会議で、つまり
最高会議です。
このあとに役員会に相当するのが理事会です。そして、一般社員に当たる会員
がいます。
〔浅田〕 専務理事は平たくいえば、全理事の代表者のような位置づけです。
〔高橋〕 会長は代表者ですから大変です。専務はその会長の意を受けて、いろい
ろな実務をやる必要があります。実務面では会長よりも、専務のほうがはるかに
多くのことをこなさなければならない。
〔浅田〕 どこでも同じだと思いますが、事務局長と専務理事はその会の実務担当
責任者ということでしょうね。
〔鈴木〕 専務理事は、いろんな委員会に参加されているのですか?
〔浅田〕 できるだけ出るようにしています。ただ、ダブル・ブッキングが多くてね。
(スケジュールの)組み立て方が難しくて。
〔高橋〕 私から説明を加えますと、副会長、専務理事、常務理事がそれぞれ委員
会の担当役員になっています。一人が全部の委員会に出ていたら、それだけで終
わってしまいますからね。
担当役員が執行部会に、この委員会ではこういう問題があるとか、こういうことを
やりたいとかを持ち寄り、話し合います。最終的には理事会にかけて、決定されま
す。
〔浅田〕 皆さんのお力添えで、いまのところ何とかやっています。引き続きよろしく
お願いいたします。
●小説が好きだったから
〔穂高〕 「他人(ひと)がやりたいといったことは、そのひとに譲りなさい。誰もやりた
がらないことは、自分が進んでやりなさい」という言葉ですが、それを生み出した、
何かしら背景があるのですか。
〔浅田〕 ぼくは自分で、そういうふうに生きてきたつもりだからね。
〔穂高〕 どの辺りから、その信条を意識されましたか。突っ込みすぎかな(笑)
〔浅田〕 ぼくはね、親がいなかったんですよ、子どものときから。いろいろ家庭の事
情があって。中学3年生から一人暮らしだった。ぼくはひとから教えられたことがな
いし、親からものを教えられていない。大学に行っていないから学問も教えられた
ことがない。だから、自分で考えなければならなかった。『一人で生きていくため
には、どうしたらいいのか』と。
世のなかで偉くなろうとか、小説家になろうとか、考える余裕などなかった。食っ
ていくことと、社会の一員であり続けることしか、ぼくは考えていなかった。今日ま
で。そうするとね。ひとが嫌だ、嫌だといっていることは自分がやる。むろん全員
が嫌だといっているわけじゃないけれど。日本ペンクラブは違うけれど(笑)
皆がやりたいといったら、自分は譲る。言葉ではっきり考えてきたわけじゃない。だ
けど、そうでなければ社会人としては失格だ、と思い込んできました。顧みれば、
それがいちばん役に立ったと思う。自分の生き方としてはね。
〔穂高〕 小説を書こうとした動機はなんですか。
〔浅田〕 小説が好きだったから、その一語に尽きます。読むのが大好きだったか
ら。読んでこんなに面白いものだったら、自分で書いてみようと、いつのころか思
い始めていた。とかく、小説家のイメージに合わせた伝説が生まれやすいもので
す。様々な職業を経て、苦労して、石にかじり付いて小説家になったとか。世間の
伝説じみたものは、ほとんど当たっていない。
ぼくはそうじゃなくて、小説が好きだった。読むのが大好きだから、書くようになっ
た。
「高橋」 中国歴史の近代史をお書きになって、3部作が今回完結しましたね、あと
も続きますか?
〔浅田〕 続く予定です。あれもね、教わったことじゃないから、怖いんです。
〔高橋〕 いやいや。非常に面白かったですよ。
〔浅田〕 教わらないことも、案外ありがたいことです。作品を書いていて思ったこと
があります。先生から教わったことは自分の根っこになってしまう。その枠から出ら
れなくなると思う。誰からも教わっていなかったから、ぼくは読んで、理解して、自
分の頭で判断できた。いわゆる、学問からはみ出したところの学問ができた。小
説家としては良い経験だったと思います。
〔高橋〕 私はある新聞で、今年度作品のベスト3の1番に上げました。
〔浅田〕 それは、ありがとうございます。
〔高橋〕 今日はありがとうございました。
(構成:穂高健一)
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■世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」の参加申込
インタビューでも話が出ました、世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」の参加申
込を受付中です。2月22日〜25日に、映画、コンサート、朗読、映像などによる多
彩なコラボレーションが行われます。
参加ご希望の方は、日本ペンクラブのホームページ http://www.japanpen.or.jp/から、
「プログラム」 http://www.japanpen.or.jp/katsudou/saigai/program.html
をご覧になり、参加希望イベント番号、氏名、連絡先をご記入の上、下記事務局宛に、E-
mailまたはファックスにてお申し込みください。
お申し込みを受け付けた方には、事務局よりご連絡を差し上げます。
参加費は、各イベント1,000円(税込)。全自由席。チケットは9つのイベントごと
です(通し券はありません)。
各イベントとも定員になり次第、販売終了とさせていただきます。
お問い合わせも、ファックスまたはE-mailでお願いします。
申し込み先・問い合わせ先──
世界P.E.Nフォーラム「災害と文化」事務局
112-0005 東京都文京区水道2-1-1
(株)勁草書房 コミュニケーション事業部内
FAX:03-3814-6904 E-mail:penforum@b-comm.gr.jp
詳しくは、「参加のお申し込み」をご覧ください。
http://www.japanpen.or.jp/katsudou/saigai/ticket.html
世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」
http://www.japanpen.or.jp/katsudou/saigai/saigai.html
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■日本ペンクラブ「電子文藝館」のご案内
12月に新しく掲載された文藝作品です。閲覧はすべて無料です。
*小説
早乙女 貢(さおとめ みつぐ 作家)「からす組(抄)」
眉村 卓(まゆむら たく 小説家)「蒼穹の手」
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/
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<<ぺんぺん草>>
2月22日から始まる〈世界P.E.Nフォーラム「災害と文化」〉の準備が大詰めを迎
えています。入場予約者の受付を開始しておりますが、まだ余裕があります。ペン
クラブの会員だけでなく一般の人も参加できる文化イベントです。文学ファンなら
ば見逃すことのできない豪華キャストによる一大イベントで、しかもおそらく二度と
ない催しですので、見逃したら損ですよ、と主催者としては思っています。
どうぞ、4日間で9つのイベント全部とはいいませんが、1つでも2つでもぜひご予
約の上お出でください。また、ご友人やご家族に、またご自身のホームページなど
で、ぜひご宣伝下さい。ぜひとも、皆さんのお力で盛り上げていただきたく、何卒
よろしくお願い申し上げます。
なお、日本側の出演者を、改めて紹介しますと(出演順)、阿刀田高、大江健三
郎、黒田杏子、俵万智、下重暁子、加賀美幸子、井上ひさし、出久根達郎、新井
満、立松和平、高田宏、吉岡忍、浅田次郎ほかです。
海外からもタイの作家、中国の作家、アメリカの音楽家、台湾の映画監督、サモ
アの作家、インドネシアのジャーナリストなどが出演し、それぞれに自作を朗読し
たり、音楽や映像によって災害と人間の問題を表現します。
各舞台には、バックの映像のほか、ライブで音楽が入ります。男声合唱、コカリ
ナ、オートハープ、チェレスタ、ミュージックバンド、ピアノ、サズ、トランペット、中国琵琶などです。ご期待ください。(高橋千劔破)


