メールマガジン「P.E.N.」バックナンバー

日本ペンクラブ・メールマガジン「P.E.N.」第45号2006年10月30日

第22回平和の日の集い(盛岡市)対談III〜森ミドリVS新井満
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目次
1)第22回「平和の日」の集い
  対談III「平和の日に想う・ことば」〜森ミドリVS新井満
2)文化庁・ペンクラブ共催「国際文化フォーラム」〜文学と災害 11月28日(火)
3)電子文藝館の新作〜大佛次郎「楊貴妃」、岩谷征捷「治癒のための小説」

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 前号に引きつづき、3月3日に岩手県盛岡市で開催された「平和の日」の集いの
対談をお送りします。
 今号は、森ミドリさん(音楽家・エッセイスト)と新井満さん(作家)が、
ことばについて語った対談です。
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■対談III「平和の日に想う・ことば」〜森ミドリVS新井満

新井 20分ほどの休憩があって、皆さんは、もうトイレも行ったし、サイン本もいっ
ぱい買ったし、あとは寝るだけという感じですので(笑)、ちょっと目を醒ましても
らうために、今日は雛祭りの日ですから、「楽しい雛祭り」の歌を会場の全員で歌い
ましょう。

 (「明かりをつけましょ ぼんぼりに」の歌詞紹介があり、森ミドリ氏のピアノ伴
奏で斉唱)

新井 はい、ガラッと雰囲気が変わってよかった。ついでに、もう少し雰囲気を変え
るために、森ミドリさんが用意してきたのがあります。これは何ですか?

森  その右のほうを読んでみてください。

新井 このとおりに読みます。どうやら岩手弁ですね、これは。じゃあ、ミドリさん
の言うままにやってみたいと思います。

ナカツガワギシノ ユキッゴトゲデ モウチョベットスルド ミンナガマッテイダ 
ハルガキテ ウグイスッコ ホーホケキョーッテ ナギヤスヨ 
キョウハ ヨウグ オデテクダシャンスタ イワテケン、モリオカシ、ニホンペンク
ラブハ ミナサンヲ ココロカラ オマジチモウシテオリャンシタ ドウゾ ゴユッ
クリ ミデッテ キイデッテ クダシャンセ」(拍手)

森  これ、盛岡てがみ館にあったので、コピーを頂いてきたんです。

新井 『遠野物語』の百何十歳の白髪のお婆さんの言葉のようで、いい感じですね。

森  本当に心地よいでしょ? とにかくゆったり話すことが大事なんです。

新井 面白いね。これが岩手弁なの?

森  分かりませんけれど、ま、岩手弁ですね。

新井 岩手弁というのは、意外に音楽的なんだね。

森  どっちかと言うとアダージョ、テンポは速くない......。歩く速さのアンダンテ
より速いと、やはり、岩手という感じはしないんじゃないかしら。東京はどちらかと
言うと、プレスト、速いでしょう。

新井 だんだん専門的になりましたね。岩手弁はアダージョ。アダージョって、どう
いう意味でしたっけ?

森  アダージョは「ゆるやかな速度」です。

新井 ゆっくりと「クダシャンスタ」と言うと、岩手弁ふうになるわけですか?

森  だから、そんなに速く「クダシャンスタ」って言っちゃちゃいけないんですね。
ゆったりと「クダシャンスタァ」って言ってください、と言われました。(会場にど
よめきあり)えっ、そうでもないですか、フフフ(笑)。

新井 会場の皆さんは答を知っていて、この二人だけ間違っているという感じですね。
でも、今初めて、岩手弁は非常に音楽性豊かな言葉なんだなって、しみじみ思いまし
た。

森  広がりがあって、温もりがあるという感じですよね。何か私は岩手弁が趣味に
なりそう、フフフ(笑)。

新井 今日のこの会場の皆さんも、普段、こういう岩手弁を使ってるのかな(笑)。

森  今、お笑いになった方は違うのかしら?

新井 このゆったりとしたアダージョで暮らしてるとは思えないけどね。もっとプレ
ストで、日々暮らしてるんじゃないかなあ。ところで、ミドリさん、趣味は何ですか?

森  趣味はカヤックです。

新井 カヤックって何ですか?

森  カヌーの中にカヤックとかカナディアンとか、いろいろな種類があるんです。
カナディアンはカナダで、カヤックはイヌイット。ハーブで言えば、シソもあればジ
ンジャーもあって、いろんな種類がある。それと同じですね。宮古から気仙沼まで、
カヤックで行ったことがあるんですよ。

新井 難しそうだね。じゃあ、話題を変えよう(笑)。カヤック以外の趣味は?

森  カラスですね。

新井 カラスが好きなんですか。でも、それはどういう趣味ですか?

森  カラスを見てたり、呼んだり、話をしたり......。カラスって、いろんな悪口を
言われて、エーッと嫌う人が多いんですが、うちに来るカラスはハンサムなんですよ。

新井 カラスの男と女って、分かるの?

森  もちろん! 子連れのカラスがいて、子は「コガラスモンジロウ(木枯し紋次
郎)」というんで、「モンジロウ」って呼んでるんですけど、もう雰囲気で分かりま
すね。

新井 みんなに名前まで付いてるわけ?

森  ええ、お父さんは「ソナタ」。ベートーベンの「テンペスト」という曲がある
んですが、その中の「あ〜あ〜あ〜」という音程と鳴き声が同じなので、「ソナタ」
にしたんですよ。片や奥さんは「コナタ」で、その子どもが「モンジロウ」(笑)。

新井 小説家も変だなと思ってたけれど、音楽家もかなり変ですね(笑)。

森  練習もしないのに、油揚げなんか、「持ってく?」「大丈夫よ。悪いことしな
いから」と言うと、そばへやって来て、私の手から「ワウ」って持っていくんです。

新井 ふうん。カラスがそんなに趣味ですか?

森  本当にきれいだから......。カラスの濡れ羽色と言うでしょう。こっちはミドリ
の黒髪じゃないけれど(笑)。習性を見てても、午後5時になると、向こうの森の巣
のほうに戻って行くんですね。でも、新井さんはカラスには全然、興味ないみたいで
すね(笑)。新井さんのご趣味は?

新井 僕の趣味? 墓参り(大笑)。

森  どういう意味ですか。有名な方とか、そうじゃない方とか?

新井 いや、ドストエフスキー、ワーズワース、トルストイ、ジョイス、良寛、雪舟、
家康、啄木とかですね。

森  ああ、ようやく石川啄木が出ました。

新井 石川啄木のお墓は岩手県にあると思っていたら、実はそうじゃないんだよね。
啄木のお墓は函館にありました。僕はお墓参りを世界中でやってますが、最初に行っ
たのが啄木のお墓でした。まだ20代のときのことでしたが、それからお墓に魅入られ
て、もう朝から晩まで、お墓のことばかり......(笑)。この間、夢見たんです。ずっ
と闇の中を歩いて行くとね、誰かの墓があるんですよ。

森  何か分かりますね、フフフ(笑)。

新井 で、墓石に「新井満」(笑)。そのとき、どういうふうにお祈りすればいいか
なと思って、思わず「迷わず成仏してください」と言ってやりましたけれどね(笑)。
それぐらい、しょっちゅうお墓のことを考えてます。お墓参りに行くと、亡くなった
人と対話ができるというのがいい。啄木のときにも、それができたんですよ。ちょっ
と再現してみましょうか。27歳の新井満が最初に、「こんにちは。初めまして」と啄
木のお墓に向かって言ったんです。そしたら意外にも、闇のほうから声がした。「ど
この誰だァ!」と(笑)。

森  そんな声で?

新井 うん。啄木の声って、聞いたことありませんか。ないよな(笑)。ちょっと甲
高いんですよ。知らなかった?

森  あ、知らないです。

新井 啄木さんは甲高い声でね、ちょっとプレストですね。速いですね、会話のスピ
ードも。でね、見知らぬ男の声だったんで、さすがの私も「ギョッ」となりまして、
じっとしてたんですよ。ちょっと怖かったから。じっとしてたら、またね、「どこの
誰だァ!」というふうに聞こえるんですよ。啄木のお墓の当人だと思ったんで、あま
り黙っていても申し訳ないんで、自分の自己紹介をしようと思った。当時、私は神戸
に住んでましたから、「神戸から来た新井満という人間です」というふうなことを言
った。そうするとね、闇の方から、
 「ふん、神戸か。で、歳はいくつだ?」
 「はい。27になります」
 「じゃあ、オレと一緒じゃねぇか」
 啄木さんは、明治45年に、数え年27歳で死んでるんです。だから、死んでからもう
何十年経っていても、やはり27歳のままらしい。
 「で、何しに来たんだ?」
 「はい、あなたのお墓参りに来ました」
 「そんなことは先刻、承知だ。墓参にかこつけて、一体、何を頼みに来たのか、そ
れを聞いてるんだよ。やっぱり、君も文学志望なのか。オレのような歌人や詩人にな
りたい口かい?もしそうなら、今のうちに忠告しておこう。やめとけ。貧乏して、肺
結核にかかって、犬死するのが関の山だ」
 本当にそういう会話をしたんですよ。信じてる?

森  うう〜ん、はい(笑)。

新井 で、新井は答えた。
 「文学志望ではありません」
 「じゃあ、何だい?」
 「まあ、しいていえば、音楽でしょうか」
 「ふん。もったいぶったこと言いやがって、歌でも歌うのか」
 「いや、歌ではなくて、作曲の方です」
 「ほう。歌詞はどうするんだ?」
 「実は、そのことでご相談に来たんですが、あなたの短歌に曲をつけさせていただ
こうと思いました」
 「無理だね。歌にはならんよ。三十一文字しかないんだから、ちょっと短すぎる」
 「たしかに。1首だけでは歌になりません。しかし、あなたが残した2冊の歌集のあ
っちから1首、こっちから1首、4首か5首並べると、ちょうどいい塩梅の詞の塊ができ
ます。その詞に曲をつけてみるのも、面白いんじゃないかと......」
 「ふん。妙なこと、考える奴だな」
 「やってみてもいいんでしょうか」
 「勝手にしろ!」
 「感謝します」
 それで、別れてきたんです。信じてくれるよね?

森  まあ、はい(笑)。

新井 それでね、27歳のときに啄木のお墓参りをして、その2年後、本当に新井満は
シンガー・ソングライターになっちゃったんです。さらに1年後に「ワインカラーの
ときめき」とかいろんな歌を歌ったりしましたけれども、作詞家の山口洋子さんから、
五木ひろしさんのアルバムのための作曲をしてくれという依頼があった。そのとき
に、啄木との会話が蘇って、早速やってみたんですよ。

森  ちゃんとつながってたんですね。

新井 そう。で、今日は『一握の砂』の初版本を持って来ました。付箋を付けたとこ
ろには、いろんな有名な歌があります。

 「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」

 「頬につたふ なみだのごはず 一握の砂を示しし人を忘れず」

 「大といふ字を百あまり 砂に書き 死ぬことをやめて帰り来れり」

 こういう有名な短歌5、6首を集めて、その言葉に作曲をして、五木ひろしさんが歌
ったんですよ。まったく売れませんでしたがね(笑)。「ヨコハマたそがれ」以上の
大ヒットを狙ったのですが、ほとんど100枚も売れなかったんじゃないかな。五木ひ
ろしの歌手人生で最高に売れなかったけれど、なかなかいい歌なんですよ。何しろ、
作詞は石川啄木ですから。皆さん、興味あります?(拍手)。じゃあ、27歳のときに
墓参に行った啄木の短歌に、どんなメロディをつけて歌ったのか。ほとんど練習もし
てないんだけれども、ぶっつけでやってみたいと思います(拍手)。ミドリさん、伴
奏をお願いします。

 (森ミドリ氏のピアノ伴奏、新井満氏の独唱に会場から大拍手)

森  もうほとんど啄木してましたね(笑)。

新井 啄木の霊が乗り移っていた?

森  「あのとき『やれっ』って、もっと言えばよかった」って、おっしゃっている
ような感じがしました。

新井 今日は感激だな。まったく売れなかったこの歌を、啄木が生まれたこの岩手の
土地で歌えることになるなんて、もう死んでもいいと思う(笑)。

森  私、お墓参りに行ってさしあげましょう(笑)。

新井 本当に岩手に来てよかった。もうこれを歌えただけで、うれしい。本当にうれ
しいときって、「もう死んでもいい」と言うんだよね。不思議ですね。逆に、「この
野郎、あいつばっかり出世しやがって、俺はもう死んでも死に切れないよ」というと
きは、ほとんど死んでるんです(笑)。だから「死んでもいい」ということは、今、
最高にハッピーで、うれしいというときなんです。どうもありがとうございました、
みなさん(大拍手)。

森  さっき市長さんのお話の中にもありましたが、啄木が生きていたら120歳、賢
治が生きていたら110歳だそうです。今だったらいろいろな医学的立場から見て、
120、130歳の長生きが可能とのことですから、このお二人が生きていて、もしもこ
の場にいたら、どんな会話をするのかって、そんなこと思いましたね。あり得ること
でしょう? 「オモシロイダベ」と思いました。

新井 啄木も、さっきの岩手弁をしゃべっていたのかな?

森  しゃべっていたでしょうね。そんな雰囲気ありません?

新井 「オマジチモウシテ オリャンシタ」って言ってたのかな?

森  「イイウタデ ゴザンシタ」って。違うかな?

新井 どうもイメージが湧かないんだなあ。

森  啄木のイメージは26から27歳のころの写真のままですからね。賢治も同じく、
36〜37歳でしたよね。

新井 僕は啄木のことばかりしゃべりましたけれど、やはり両巨頭ですから、いよい
よ宮沢賢治の部に行きたいと思います。宮沢賢治の部の担当は森ミドリさんです。賢
治のいろんな文章は、小さいときから読んでましたか?

森  「雨ニモマケズ」は、私が唯一、暗誦できるものなんですよ。

新井 ぜひとも。聞いてみたいな。やっていただけますか?

森  えっ? それでは......。

 (「雨ニモマケズ」を全文暗誦。大拍手)

新井 素晴らしい。すごいね。驚いた。どうして、そんなに暗記できたの?

森  好きだったんですね、子どものときから。

新井 僕はあまりの感動に、身体がのけぞってきて、だんだん荒川静香状態になって
きて、ほとんどイナバウアーだああ。この辺まで反らすと、もう背中が痛い(笑)。

森  あとは「風の又三郎」ですね。山に登ると、ワーッと突然に風が吹くでしょう?
風の音がする。そうすると、「ドードドドド......」って歌うんですよ。映画のあの音
楽が忘れられないんですね。賢治というのは、やはり、そういう音から入っていくん
です。

新井 賢治の文学は非常に音楽的なんですね。

森  そう。聞くところによると、賢治はモーツァルトよりはベートーベンが好きだ
ったとか。

新井 そんなことを賢治が言ってるわけ?

森  賢治の本をいろいろ読んでると、ベートーベンが好きだって。それに、この間、
賢治が私のもとにやって来て、そう言ってましたから(笑)。

新井 賢治の霊がミドリさんの枕元に立って......(笑)。

森  そういうことになりました、今、急に(笑)。

新井 何か困ったときに、賢治が来るとか啄木が言っていたとかってね。誰も「証拠、
出せ」とは言わないからね(笑)。

森  だから、思いの中ではいいですよね。賢治って、ものすごく歩いた。ベートー
ベンもとにかく歩いたんですよね。森の中を歩くから、やはりああいう音楽になるん
ですよ。リズムというか、『運命』の「ダダダダーン」にしてもね。賢治の言葉とい
うのは、すごく素晴らしいでしょ。最初の出だしから、「エーッ」と思わせる。とて
も音楽的ですよね。さっき舞台の袖で、井上会長が「ラ・ラーララーララーラ」って
ハミングなさってたんですよ。

新井 どんな歌?

森  「星めぐり(の歌)」という歌でしたね。

新井 それは誰が作ったの?

森  賢治さまの作詞・作曲です。

新井 賢治さんはシンガー・ソングライターでもあったの? 

森  そうですよ。

新井 本当?

森  本当って、すごいんですよ。岩手の皆さんはご存じですよね(拍手)。でね、
本当にちっちゃな声で歌ってらしたので、井上会長に出てきていただけたらと......(
拍手)。

新井 井上さん、さっきミドリさんのそばで歌ったのが運の尽きで、ソロで歌わない
と、皆が納得しませんよ(拍手)。

 (井上会長が拍手に迎えられて登壇)

井上 それではスキャットで歌いましょう。「ラララ」でいきますか。僕はテンポが
取れないんで、適当なんですが......。

新井 井上さんの小説は読んだことあるけれど、歌って聴いたことないですね。

井上 僕も聴いたことないですよ(笑)。

 (森ミドリ氏のピアノ伴奏で井上会長のスキャット)

新井 素晴らしい(拍手)。

森  本当にこのために盛岡にいらした感じがある......ゾクッとしちゃいました。

新井 何か哀愁がただよってましたね、背中に(笑)。何となくやるせない感じがよ
かったなあ。「ラララ〜」もいいね。しみじみしたね。お酒が飲みたくなってきた。
会場にいらっしゃる方も、「知ってます」って顔してるんだね、皆ね。じゃあ、全員
でまたやってみましょうか、この「星めぐりの歌」を。

森  この歌は『銀河鉄道の夜』にも出てくるんですよ。じゃあ、皆さん、全員で。

 (「あかいめだまのさそり ひろげた鷲の つばさ」と始まる歌を斉唱)

新井 ミドリさん、でも、これ、いつまで行っても終わらないメロディだね。犯人が
見つかりそうで見つからなくて、また探偵が追いかけて行って、もうちょっとでやっ
ぱり見つかりませんでした、また続刊と、そういうメロディだね。

森  そう言う新井さんはこの歌、知らなかったんですってね(笑)。

新井 『銀河鉄道の夜』を読まない奴は日本人じゃないと......。

森  そんなことはないですけど、私もそんな早くから知っていたわけではありませ
んし......。でも、なかなかいい歌でしょ。擬声語というんですか。電車がゴトンゴト
ンではなく、木がゴトンゴトン鳴る、電柱がドッテコドッテコ並んでいる、とかそう
いう面白い表現がなされています。

新井 表現の面白さ、と言うのは分かりますね。今朝、『銀河鉄道の夜』を改めて読
んでいて、すごいなと思ったのは、坂の下に大きな1つの街灯、その街灯が「青白く立
派に光っていた」と。街灯が「立派に光る」か?(笑)

森  昨夜の歓迎会のスピーチで、増田知事さんが「めきめき雪が溶ける」とおっし
ゃったんです。気がつきませんでした? 私、それを耳にして、「あ、賢治だ!」と
思ったんですよ(笑)。

新井 「めきめき雪が溶ける」、すごいな。知事さんは宮沢賢治の生まれ変わりかな
?(笑)。やはり、宮沢賢治のDNAが知事さんにも移ってしまったということかな。

森  その表現がとても面白いんで、今の私に面白い、というものを見つけてきまし
た。

新井 何というタイトルですか?

森  『密醸』というタイトルです。「ジョウ」は醸造酒の「醸」。

新井 ああ、要するに、密造酒のことですね(笑)。ここにミドリさんが書いてくれ
た宮沢賢治の詩がありますね。「密醸」というタイトルの詩をちょっと読んでみます
ね。

 汽車のひびきが きれぎれ飛んで
 酸っぱくうらさむいこの夕がた
 楢の林の前に
 ひどく猫背のおばあさんが
 熊手にすがって立ってゐる
 右手をかざして空をみる
 それから何かを恐れるやうに
 ごく慎重にあたりを見て
 こっそり林へはいっていく
 あともうかさとも音はせず
 汽車のひびきが遠くで湧いて
 灰いろの雲がばしゃばしゃとぶ

森  面白いでしょう、「ばしゃばしゃ とぶ」とかね。本当に牧歌的というか、と
てもアッタカイ。本当は「いけないんだよ」と言うところを、すごく優しくとらえて
る。

新井 密造酒のことは何も言ってないよね。ただ「猫背の婆さんがキョロキョロして、
林の中に入って行きました」だけなんだけれど、その林の中に密造工場か何かがある
わけ?

森  自分のちっちゃな工場がね、見えないところに......。

新井 数ある賢治の詩の中から、ミドリさんはこの「密醸」に感銘を受けたというこ
とですね。それでこの詩に感動して、今から何をしようとしてるんですか?

森  すみません。だから、即興で歌をつけたいと......(拍手)。

新井 この詩に即興でメロディをつけて、なおかつ歌ってしまう。大変なことですね。

 (ピアノで即興演奏)

新井 本当に即興なの?

森  本当です。歌い終わった今は、もう歌えません。録音したのを採譜しないと(
笑)。

新井 実は昨日、徹夜で作ってたんじゃないの?

森  いえいえ。本当は別の詩を用意していたんです。「風」とか「雲」とか、そう
いうものを。でも、昨日、もりおか啄木・賢治青春館へ行って、この詩を見て、「え
っ、これいい、これください」とお願いしたら、このコピーをその場でくださって...
...。今、私はどういう心境なのかしら? 別に密造したいというんじゃなくて(笑)、
なぜか温もりを感じるんですよ、この詩の中に......。

新井 いや、僕は感じないけどね、別に(笑)。猫背の婆さんの顔をよく見たら、猫
だった、ヒゲが生えたりしていて......。賢治だと、そういうふうに行ってしまうよう
な感じですね。

森  そっちの世界、二次元のほうに行きますか。

新井 猫背の婆さんが入っていった林の向こうには、銀河鉄道のステーションがあっ
て、猫背の婆さんが汽車に乗って、ジョバンニに会うとかさ(笑)。そういう展開が
あるような......。

森  何かずいぶんと背中が曲がってきたような感じがするんですけど(笑)。

新井 猫背の婆さんなんて言うからね。いや、あと1分しかないそうですよ。強制的に
終わらないといけないんで終わるんですが、ちょっと色をつけていただいて、ミドリ
さん、最後にひと言、どうぞ。

森  「わたしの岩手山」という歌を作ったので(拍手)、それを皆さんに覚えてい
ただきたいなと思って......。1分で3番だけ歌いますね。

 明日へと導く 愛ある山よ
 何を夢見てるの 教えてほしい
 岩手山 岩手山 豊かなる山よ
 岩手山 岩手山 わたしたちの山
 岩手山 岩手山 誇りある山よ
 岩手山 岩手山 わたしたちの山

新井 森ミドリさんの歌でわれわれのバトルトークは終わりにしましょう。どうも、
ありがとうございました(大拍手)。

                 (文=理事・会報委員会委員長 清原康正)

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■「第4回国際文化フォーラム」文化庁・日本ペンクラブ共催

座談会「文学と災害」−いかに歎き悲しみ、いかに生き直したか−

開催日:平成18年11月28日(火)17:00〜20:00

会 場:MY PLAZAホール(東京都千代田区丸の内)
    http://www.myplaza.jp/index.html
    
交 通:JR/東京駅丸の内南口・有楽町駅国際フォーラム口 徒歩5分
    地下鉄/千代田線二重橋前駅 3番出口直結


座 長:阿刀田高(作家/日本ペンクラブ専務理事)

基調講演:演題「浅間山大噴火と人間」立松和平(作家/日本ペンクラブ理事)

パネリスト:リンダ・クリスタンティー(作家/インドネシア)
楊黎光(作家/中国)
クワンユーン・ルークチャン(作家/タイ)
      阿刀田 高
      立松 和平

入 場:入場無料。申し込みはインターネット、FAX、または往復ハガキにて。
(先着300名)

※インターネットの場合:下記アドレスにアクセスの上、
お申込みフォームにてご入力ください。(FAX申込み用紙もございます)

文化庁「国際文化フォーラム」
http://www.bunka.go.jp/forum.2006/index.html


※はがき・FAXの場合:「座談会『文学と災害』傍聴希望」と明記し、
氏名、住所、TEL、FAXをご記入の上、下記までお送りください。

郵便番号105-0004 
   東京都港区新橋2-13-8新橋東和ビル3F 
   第4回国際文化フォーラム事務局
   FAX 03-5511-1505

申込み受付中です。
どうぞご参加ください!

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■声明「北朝鮮の核実験に反対して、関係諸国に非核兵器地帯の拡大を訴える」

 10月16日、日本ペンクラブは、北朝鮮の核実験に反対し、また核保有国に核廃絶を
求める声明を発表。当日、午後7時のNHKニュースに取り上げられ、翌日、新聞各紙
で報道されました。また、各政党・関係省庁にも送りました。

この声明の全文は、ペンクラブのホームページでご覧になれます。
http://www.japanpen.or.jp/seimei/061016.html

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■ペンクラブ「電子文藝館」の新作案内

*戯曲・シナリオ
大佛 次郎(おさらぎ じろう)「楊貴妃」
*評論・研究
岩谷 征捷(いわたに せいしょう)「治癒のための小説」             

閲覧はすべて無料です。ぜひご覧ください。
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/index.html

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