メールマガジン「P.E.N.」バックナンバー

日本ペンクラブ・メールマガジン「P.E.N.」第33号2005年9月28日

第21回平和の日の集い(松山市)対談III〜新井満VS三宮麻由子 その1
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 前号に引き続き、今年3月、愛媛県松山市にて開催した「平和の日」の集いより、
対談の要旨をお送りいたします。

 作家の新井満さんとエッセイストの三宮麻由子さんが「ことば」について語った
トーク、その1です。
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■リレートーク3「平和の日に想うものがたり」〜新井満VS三宮麻由子 その1

新井 まず、私のほうから簡単な自己紹介を......。私は不幸と不運を片手では数
え切れないくらい持ってしまったかわいそうな人間ではないかなと、自分では思
っているんです。
 ざっと挙げてみると、1歳の時の父親の急死、小学生の時の新潟大火、高校入
試の前夜にその学校が全焼、高校3年の6月に新潟大地震で高校の校舎が全壊、わ
が家も全壊しました。

三宮 新井さんのホームページに、新潟の中越地震の時も佐渡にいたとありまし
たが、平成になってもまた地震に遭われてしまったんですね。

新井 そうなんです。40年前は新潟大地震で、神戸に住んでいた時は阪神淡路大
地震、去年の中越地震の時は新潟で講演会があったんですよ。
 その40年前の新潟大地震でトラウマを負って、お腹が非常に痛くなって救急車
で運ばれて開腹手術をし、大学1年生の1年間を休学しました。

三宮 新井さんは上智大学で、私の先輩に当たるんですが、上智大学にはいろん
な学生がいて、私のサークルにも大学に8年いたという人がいましたね。

新井 こういう人生を送ってくると、神様って実に不公平だな、としみじみ思い
ますね。
 ある時、こういう不幸、不運とどうやって折り合いをつけて生きていったらい
いんだろうかと考えました。
 下村湖人の『次郎物語』の中に、お城の石垣の石と石の間から松の木が生えて、
巨木になってそびえ立っているのを、次郎と先生が見上げる場面が出てくる。
 この松は最初、自分は何という場所に生えてしまったんだろう、自分は不運だ
な、と思ったに違いない。しかし、この松は、自分の置かれた不運を受け入れ、
しかる後に愛したに違いない。そのことで自分の不運な境遇を超えたのではなか
ろうか、というようなことを先生が次郎に言うんですよ。
 これを読んだ時に、ああ、そうか、神様は相当不公平で、僕に試練を集中して
与えてくれたようだけど、恨んでもしようがない、全部受け入れて愛してしまえ
と思ったら、随分と気持ちが楽になりました。今日のテーマの「ことば」で言え
ば、不運を受容し、愛することによって、それを乗り越えるしか生き方はない、
というのが、僕が提案した言葉ということになります。それでは、三宮さん、自
己紹介を......。

三宮 私は4歳の時に病気で視力を全部失いました。障害者とか全盲とか、マイ
ナスのイメージを払拭したいなと思って、「シーンレス」という言葉を作ってみ
ました。景色がないという私の造語で、もっといい日本語を考えたいと思ってい
ますが、『そっと耳をすませば』という本でデビューさせた言葉です。
 ヘレン・ケラーさんがおっしゃるように、見えないことは不便だけど、不幸で
はない、と私も思うんです。ただ、大変なことがあるとすると、見えないことか
らくる二次的なものなんですね。社会の目だったり、一般校への受験のことなど、
12歳で経験するにはかなり厳しい挫折がありました。
 就職も含めて、かなりの窮地に追い込まれるんですけれども、私の場合は必ず
そこでフォローアップしてくださる何か、人だったり出来事だったりが現れるん
ですね。
 12歳の時の一般校の受験拒否はすごく大きなトラウマとしてあるんですが、そ
の時に両親が、希望を捨てちゃダメですよ、と教えてくれた。
 当時、私はピアノを習っていたのですが、両親がグランドピアノを買ってくれ
て、ますますピアノが好きになりました。そのピアノも希望のひとつとして、私
に与えられたフォローアップだった。友達とか先輩とか先生とかいろいろな人が、
私の不運をフォローアップしてくれる。
 だから、不幸というか、アンラッキーなことが訪れると、ああと思うけれども、
その後に何倍もの感謝をするということが繰り返されたので、やはりどんな時も
感謝と希望は忘れちゃいけないんだなと思えるようになりました。

新井 僕にはね、困った時、誰も助けに来てくれないよ(笑)。

三宮 本当は来てるんですよ、きっと。私の知らないところで大きな力が動いて
いるな、と思う時がある。私の場合は、人間だけじゃなくて、鳥も幸福の使者と
してフォローアップしてくれたんです。

新井 鳥がどうやって助けてくれたの?

三宮 飼っていた鳥から、その声から、私は光というものを教わったんです。
 例えば、東の窓にいる鳥がさえずり出すと、太陽が昇って来たということなん
ですね。それから5分くらい経つと、西の窓の鳥が次にさえずる。ということは、
その時点で、東の窓と同じくらいに西側も明るくなった、鳥がさえずるくらいの
明るさになった、ということなんですね。そうやって、太陽が動いていく方向が
分かる。
 その時間を計っていると、夏はどんどん夜明けが早くなっていくのが分かる。
夕方は、東の鳥から鳴き止み始めます。
 三光鳥というとてもきれいな夏鳥がいて、『鳥が教えてくれた空』という本に
も書いたのですが、赤城山で夜明けにその声を聞きました。三光鳥って、どう鳴
くかというと、こんなふうに鳴くんです(口笛で鳴き声を出し、会場から大拍手)。

新井 今、鳥の言葉では何と言いました?

三宮 「来たよ」ぐらいでしょうかね(笑)。
 この三光鳥が夜明けに来て、次にはメジロがやって来る。今日も松山にはメジ
ロが随分多いようですけど、メジロはこんな鳴き声です(口笛で鳴き声)。
 だんだんと朝の鳥が増えていき、ヒヨドリ、ハクセキレイ、キセキレイ、コゲ
ラ、シジュウカラ、コガラ、ヤマガラ、ゴジュウカラと順番に出てくるんですね。
 それで鳥たちのコーラスになっていって、1時間も聞いていると、30から40種ぐ
らいの鳥の声が聞けます。今、私は200から250種類の鳥の声を聞き分けられるよ
うになり、鳥の声によって光をリアルタイムで感じることができました。
 自然の中に飛び込んでいくという勇気ももらって、不幸は幸福に切り換えられ
るものなんだな、と思いました。
 鳥が開いてくれた世界を感じていった時に、ある祈りに出会いました。
 大学生の時、昔は小鳥に説教した聖人がいたんだよ、というお話を神父様に聞
いたことがあります。聖フランシスコのことなんですが、その後、イタリアのア
ッシジのフランシスコ寺院に行った時、日本人の神父様が「平和の祈り」という
カードをくださいました。その一部を読んでみます。

 私をあなたの平和のために用いてください。
 憎しみのあるところに愛を、
 争いのあるところに和解を、
 分裂のあるところに一致を、
 疑いのあるところに真実を、
 誤りのあるところに真理を、
 絶望のあるところに希望を、
 悲しみのあるところに喜びを、
 暗闇のあるところに光をもたらすことができますように。
 慰められることよりも慰めることを、
 理解されることよりも理解することを、
 愛されることよりも愛することを望ませてください。

 こういうお祈りなんです。
 私たちは平和の中に生きて、平和を作る責任もあるし、平和であるためには、
皆が幸福な気持ちで生きることが大事だと思う。このお祈りの中には、そうなる
ための心構えが書かれていると思って、小鳥になったつもりで読んでみました。

                文章=理事・会報委員会委員長 清原康正

(次号も引きつづき作家の新井満さんとエッセイストの三宮麻由子さんの対談を
掲載します。
 どうぞお楽しみに)
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■第3回国際文化フォーラムのご案内

座談会「アジアのこどもと読書‐アジア女性作家の視点から」

文化庁と日本ペンクラブの共催により、下記の座談会を開催いたします。

開催日 : 2005年11月5日(土)15:00PM〜18:30PM

場 所 : 丸ビルホール(東京都千代田区丸ノ内2丁目4番1号丸ビル7F)

内 容 : 作家自身がこどもの頃に読んだ本、自分のこどもに読み聞かせた本に
ついて語る。

1. 座長挨拶 阿刀田高
2. 基調講演 高樹のぶ子
3. ショートレクチャー
   デヴィ・アングラニエ(オーストラリア)
   パタマポン・ブサパツムロン(タイ)
   潘向黎(中国)
4. パネルディスカッション

入場料:無料

定員:先着300名

お申し込み方法:ファックス、または往復ハガキにて。
        「座談会『アジアのこどもと読書』傍聴希望」、
        住所、氏名、電話番号を明記の上、下記までお申し込み下さい。
        (先着順ですので、どうぞお早めに)

105-0004 東京都港区新橋2-13-8新橋東和ビル3F 
      第3回国際文化フォーラム事務局
      FAX 03-5511-1505

ご参加をお待ちしています。

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■新刊のご案内

『撫子が斬る』女性作家捕物帳アンソロジー
 宮部みゆき選・日本ペンクラブ編・1100円・9月8日発売

「捕物帳」とは、時代小説であると同時に、ミステリーとしても楽しめる一大人
気ジャンルです。
そしてこの本は、女性作家による「捕物帳」だけを集めた画期的なアンソロジー
です。

作者は、選者の宮部みゆきのほか、平岩弓枝、杉本苑子、北原亞以子、杉本章子、
澤田ふじ子、宇江佐真理、諸田玲子、藤原緋沙子、山崎洋子、藤水名子、松井今
朝子、小笠原京、築山桂、畠中恵。

当代を代表する15名の人気作家の饗宴です。

全国の書店で好評発売中です。

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■ペンクラブ「電子文藝館」のご案内

 9月後半に新しく掲載された文藝作品です。

*ノンフィクション
 望月 洋子(もちづき ようこ 作家) 「ヘボン 維新前夜の日本へ」

*小説
 畠山 拓(はたけやま たく 小説家) 「愛の漂流」
 三島 由紀夫(みしま ゆきお 小説家) 「女方」
 中山 義秀(なかやま ぎしゅう 小説家) 「碑」
 菊地 秀行(きくち ひでゆき 小説家) 「欠損」

*随筆
 三好 徹(みよし とおる 小説家) 「わたしの森敦・井上靖と大岡昇平」

*評論・研究
 野田 宇太郎(のだ うたろう 詩人・評論家) 「異国情調の文藝運動」
 磯貝 勝太郎(いそがい かつたろう 文藝評論家) 「歴史小説の種本」

 閲覧はすべて無料です。ぜひご覧下さい。
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/index.html

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「ぺんぺん草」

 日本ペンクラブでは、1994年から、毎年、中国ペンとの交流を続けています。
 今年の秋は、日本ペンクラブから、会長の井上ひさしを団長として、浅田次郎、
関川夏央、三田誠広、吉岡忍の5名が、北京と上海を訪問する予定です。