メールマガジン「P.E.N.」バックナンバー

日本ペンクラブ・メールマガジン「P.E.N.」第30号2005年7月29日

第21回平和の日の集い(松山市)より 対談2〜阿刀田高VS浅田次郎 その1
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  前号に引き続き、今年3月、愛媛県松山市にて開催した「平和の日」の集い
より、対談の要旨をお送りいたします。

  人気作家の阿刀田高さんと浅田次郎さんが「ものがたり」について語った
トーク、その1です。
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■リレートーク2「平和の日に想うものがたり」〜阿刀田高VS浅田次郎 その1

阿刀田 外国語で小説という語を調べると、ロマンスというのは、今日のフランス
語、イタリア語、スペイン語になったロマンス語に由来するもので、大衆が語って
いた通俗的な言葉で書いたものという意味で、ノベルというのは、フランス語のヌ
ーベル、新しいもの、珍奇なものというところからきている。フィクションという
のは、嘘とか作り話という意味です。
 小説の語源になってるものは、みんな少しいかがわしい、ラテン語で書かれた公
式なものではないという要素が含まれているわけです。
 日本でも古い時代には、大切なものは基本的には漢語で書かれていた。書くとい
うことが一番権威のあることであって、それに比べて語るというのは大衆性があっ
た。つまり、もの語りですね。だから、いい加減な話も多いんですよ。そこにいろ
んなものがくっついて面白くなったものが小説だと思うんです。

浅田 物語というのは、語る─それを聞く、というのが原初的意味だと思いますね。
識字率が低かった時代、本が読める人というのは教養人だった。それ以外は、人か
ら聞く、語っているのを聞くのがストーリーの享受の仕方で、その時代のほうがは
るかに長かった。
 それと、識字率の問題ではなくて、文字を必要としない民族もいっぱいいたんで
すね。
 文字というのは、農耕民族には必要で、狩猟民族はさほど必要としなかったとい
う考え方もある。狩猟民族は声だけで、言葉だけで意思の疎通ができた。定住しな
いし、読み書きするための道具を持ち運ぶのも不便というのも、一つの理由かもし
れません。
 満州族が満州語を持ったのは清代の初期のことで、日本民族も固有の文字を持っ
ていませんでした。そういう文字を持たなくていい、あるいは持っていなかった民
族では、ストーリーを語る人がいて、それを聞く人がいてという、長い長い歴史が
あったと思うんですね。

阿刀田 柳田国男説によると、伝説は植物で、昔話は動物であると......。
 伝説には特定の人名や地名が出てくる。その土地にくっついたものだから動かな
い。植物です。
 昔話は人が土地から土地へ運んで行って動いている。「昔々、ある所に、おじい
さんとおばあさんがいて......」というのは、時代も場所も名前も分からないから、
どこまでもどんどん動いていってかまわない、動物だ、というんですね。
 なるほど、もっともだなと思ったし、日本の民俗学ではある時期までそういうふ
うに思われていたらしいのですが、植物だと思っていたものも結構動いている、と
いうのが最近の定説のようです。動いていった先々で少しずつ話を変えていく。伝
わってきた古い話に、その町の話が加わっていくんです。

浅田 この間のインド洋の津波の時に、狛犬の眼が赤くなると津波が来るという民
話を思い出しました。
 この民話は日本各地にあるんですが、内容は同じだけど、狛犬であったり、お地
蔵様であったり、置物の亀であったりと、土地によって少しずつ異なってくる。そ
の土地に合った形で広まっていて、内容は大体同じ、というのが面白いと思います
ね。

阿刀田 シンデレラ物語は、グリムも書いてますが、フランスのペローが書いたも
のが日本に入って来ました。明治のころ、坪内逍遙が小学校高学年のために書いた
国語の教科書の中に「おしん物語」という日本バージョンの完全なシンデレラ・ス
トーリーがあります。「シンデレラ」だから「おしん」としたんだろうと思います
が、おしんはいつもかまどの傍にいる。王子さまは若殿で、ガラスの靴は扇子にな
ってます。閉じられている扇子の絵柄をおしんだけが言うことができ、めでたしめ
でたしとなる。浅田さんに聞いたら、そういう話はいろんなところにあるというこ
とでしたね。

浅田 シンデレラの話自体、ペロー以前に何か原典があるんじゃないかと思います
ね。

阿刀田 それはあるでしょうね。

                文章=理事・会報委員会委員長 清原康正
(次号も、阿刀田高さんと浅田次郎さんの対談を掲載します。どうぞお楽しみに)

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■公開講座のご案内
日本ペンクラブ発「ペンの学校」

「作家の眼、創作の芽」というテーマで、自作を生み出すきっかけとなる着眼点、
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ります。

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第5回 8月20日(土)15:45〜17:15 椎名誠(作家)
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会 場 朝日カルチャーセンター 
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交 通 地下鉄 大江戸線「都庁前駅」A6出口直結
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お申込み先・お問い合せ先  朝日カルチャーセンター 電話03-3344-1945(直)
              (月)〜(土)10:00〜18:00(日・祝日は休み)

どうぞご参加ください。

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■ペンクラブ「電子文藝館」のご案内

 7月に新しく掲載された文藝作品です。

*主権在民史料
明治天皇 「五箇条のご誓文」
昭和天皇 「敗戦翌年元旦の詔書」
楠瀬 喜多(くすせ きた 女権論者) 「男女同権の女性参政権につき願書」
愛国公党 議会開設建議「民撰議院設立建白書」
松村 辨治郎(まつむら べんじろう 陸軍歩兵伍長) 「国会開設の儀」
岡山県民 新庄厚信ほか 「国会開設願望ノ建言依頼書」
「自由新聞」 論説「権利之源」

*小説
尾津 晃代(おづ あきよ 作家)「沖見茶屋」
上田 周二(うえだ しゅうじ 詩人・作家)「深夜のビルディング」

*詩
中井 ひさ子(なかい ひさこ 詩人)「動物記」
中村 稔(なかむら みのる 詩人)「鵜原抄 抄」

*評論・研究
川端 康成(かわばた やすなり 小説家)「新進作家の新傾向解説」

 閲覧はすべて無料です。ぜひごらんください。
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/index.html
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「ぺんぺん草」

 今年の6月から、ペンクラブの広報室のメンバーが、若干、変わりました。
 メルマガの編集発行にくわえて、さまざまな広報を展開していきたいと
考えています。
 今後とも、どうぞよろしくお願い申しあげます。

 担当役員: 阿刀田 高(作家)
新井 満(作家)
 室 長 : 松本 侑子 (作家)
 副室長 : 清原康正(文芸評論家)
 室 員 : 稲川 素子(エッセイスト)
       鈴木 康之(エッセイスト)
       新津 きよみ(作家)
       吉澤 輝夫(編集者)
       渡辺 弘子(エッセイスト)