●日本ペンクラブ・メールマガジン「P.E.N.」第10号2004年4月15日
『それでも私は戦争に反対します。』より「はじめに」
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『それでも私は戦争に反対します。』(日本ペンクラブ編・平凡社・1680円[税込]
)は、3月上旬の発行後、朝日新聞などで紹介され、おかげさまで3月中旬に第2刷発
行、さらに4月には第3刷と第4刷が決定しました!
これは、45人の書き手による反戦表現集です。
本の冒頭「はじめに」の全文を、ここに引用して、ご紹介します。
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はじめに
いま私たちは、世界と日本の新しい現実を目の当たりにしている。
超大国アメリカが他国や他者の言うことに耳を傾けず、気に入らない国々を軍事力
で蹴散らし、さながら〈帝国〉としてふるまい始めた現実。
日本政府がそのアメリカに追従し、自衛隊を戦地に送って、戦後の日本人がもっと
も大切にしてきた原則を踏みにじっていく現実。
このどちらの現実にも、言葉がない。相手に、他者に、他国に、語りかけ、共感を
誘い、合意を作りあげていく言葉のプロセスが最初から抜け落ちている。言葉を失っ
たまま、軍事力を誇示し、力で押し通し、既成事実だけを積み上げていく。このこと
もまた私たちが目の当たりにしている新しい現実、荒っぽい現実と言わなければなら
ない。
こうした現実の全体を、ここでは〈21世紀戦争〉と呼ぼう。私たちは〈21世紀戦争
〉の現実、当事者としての戦時下を生きている。
イラク戦争が始まって、まもなく1年になる。
2003年3月20日、イラクに侵攻した米英軍は圧倒的な軍事力でイラク全土を制圧・占
領し、フセイン政権を瓦解させた。アメリカのブッシュ大統領は5月1日、戦闘終結を
宣言し、年末には潜伏していたフセイン大統領の身柄も拘束された。
しかし、戦争が終わる気配はいっこうにない。
あらたな統治者となった米英軍などに対する襲撃はイラク各地で頻発し、デモやサ
ボタージュも行なわれている。経済状態も悪化し、どの町にも職を求める人々があふ
れている。占領統治に対する反発が一部では抵抗運動へと変わっていき、対して占領
軍はますます武力にたよって抑え込もうとする。現在のイラクではこの悪循環がつづ
いている。
この戦争には、最初から大きな疑問がついてまわった。
ブッシュ政権は2001年9月11日にアメリカを襲った同時多発テロの直後から、アメリ
カの存在感を軍事力によって誇示しはじめた。テロ実行者との関係が解明されないま
まにアフガニスタンに対する報復戦争に乗りだし、つづいて「大量破壊兵器の除去」
と「フセイン政権の打倒」を公言してイラクに侵攻した。
イギリスのブレア政権もこれに追随したが、両政府とも、イラクが実際に大量破壊
兵器を保有しているかどうかを真剣に検証しようとしなかった。またフセイン政権の
独裁が、かつてその隣国で起きたイラン革命を敵視した当のアメリカ政府自身によっ
て支援され、強化された事実も顧みられることはなかった。
こうした身勝手なやり方に対して世界各地で反戦デモがくり広げられ、フランス、
ドイツ、ロシア、中国など各国政府も、国連などで米英両政府を批判した。今日では
、アメリカ政府がイラクに派遣した査察責任者やイギリスの情報機関幹部すらが、90
年代なかば以降のイラクには大量破壊兵器が存在しなかったことを明言しはじめ、こ
の侵攻が大義なき戦争だった事実が次々と明らかになっている。
にもかかわらず、「日米同盟重視」を謳う日本の小泉政権と与党はブッシュ政権を
支持しつづけ、自衛隊がアフガニスタンに出撃する米軍を支援するテロ対策特別措置
法を制定した(01年10月)のにつづき、03年7月にはイラク復興支援特別措置法を定め
、イラクへの自衛隊派遣を推し進めた。
ブッシュ大統領は「国際世論や国連が反対しようともフセイン体制を打倒する」と
呼号した。小泉首相は「世論に従っていたら間違う。(自衛隊派遣反対は)見解の相
違」と突っぱねた。ここにあったのは大義も根拠もあいまいな一方的なスローガンと
かけ声と気合い、それらによって動員される武力と暴力だけだった。
戦争が始まって1年足らず、イラクでは8千人から1万人の民間人が殺害され、約2万
人が負傷した( http://www.iraqbodycount.net/ 参照)。アフガニスタンでの戦
争でも1万人前後の人々が犠牲となったと言われるが、その正確な人数すら明らかにさ
れていない。問われるたびに米中央軍司令官は「われわれはそんなものは数えない」
と言ってのける。
この荒っぽさが〈21世紀戦争〉である。そして、この強引さがまた、20世紀の世界
と日本が二度の大戦という悲惨を経て、ようやく作りあげてきた社会規範と国際協調
の枠組みを踏みつぶしていく。日本もまた自衛隊を戦地に派遣することによって、壊
す側に組み込まれ、荷担していくことになった。
人類はもう十分すぎるほどに戦争をくぐり抜けてきた。その悲惨、残酷さ、悲しみ
は体験した個々人にばかりではなく、歴史とこの現在の記憶のなかに痛ましく刻み込
まれている。そこから私たちが汲み取るべきは、一人ひとりが考え、語りかけ、たが
いに同情し、共感し、合意を作りあげていくことによってしか、この国も、この世界
も成り立っていかない、というぎりぎりの知恵だったはずである。
だからこそ、いま言わなければならない----それでも私は戦争に反対します。私の
言葉、あなたの言葉、一人ひとりの人間の言葉によって。
本書には45人の作家、詩人、歌人、俳人、劇作家、写真家、漫画家、エッセイスト
、ジャーナリスト、批評家、学者などが文章を寄せている。その内容やスタイルも創
作、手紙、風刺、批評、分析とさまざまなら、年齢も新進の20代から70代のベテラン
まで多岐にわたる。〈21世紀戦争〉が問答無用のスローガンやかけ声、力の誇示や軍
事力によってこの現実を塗り込めようとするとき、一人ひとりがそれぞれにちがう言
葉を探り当て、語り、書くことには大事な意味がある、と私たちは信じている。
だが、この本を手にしたあなたにとって何より大切なのは、あなた自身の言葉では
ないだろうか。本書にあるのは新しい現実を読み解く答えであるよりは、より大きな
問いかもしれない。私たちが望むのは、ここにあるひとつひとつの言葉が刺激となり
、誘い水となって、あなた自身の言葉が発せられ、私たち一人ひとりの言葉と響き合
いながら、この現実を少しでも変えていくことである。
編者
(『それでも私は戦争に反対します。』8〜12頁より引用)
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45人の執筆者は、以下のみなさんです。
・創作......浅田次郎、阿刀田高、安西水丸、大岡信、小中陽太郎、辻井喬、道浦母都
子、梁石日、唯川恵、吉岡忍、米原万里
・手紙......落合恵子、小林エリカ、澤地久枝、立松和平、長薗安浩、日垣隆、森達也
、養老孟司、吉田司
・批評......新井満、石坂啓、江川紹子、大石芳野、倉橋羊村、小谷真理、下重暁子、
巽孝之、中西進、秦恒平、松本侑子、森詠、森まゆみ、渡辺えり子
・エッセイ......赤瀬川隼、雨宮処凛、池澤夏樹、井上ひさし、轡田隆史、計見一雄、
高橋千劔破、田原総一朗、西木正明、保阪正康、三好徹
お近くの本屋さん、インターネット書店などで、ぜひお求めください!
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■ペンクラブ「電子文藝館」のご案内
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3月下旬に新しく掲載された文藝作品です。閲覧はすべて無料です。
津田 崇 「空襲の朝」
大町 桂月 「十和田湖」
林 雄介 「半熟官僚大辞典」
岩田 光子 「陽羅文学私論」
和辻 哲郎 「偶像崇拝の心理」
山本 実彦 「『改造』の十五年」
大町桂月、山本実彦など、書店では入手が困難になった書き手の作品も掲載していま
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