船木 倶子

ふなき ともこ 詩人 1952.1 秋田県男鹿半島に生まれる。 掲載作は、平成十三年(2001)土曜美術社出版販売刊の詩集『あなたとおなじ風に吹かれた』より抄出。
→ホームページ(http://www.tomokofunaki.com

あなたとおなじ風に吹かれた

  夏夜

 

夕涼みに と

 

わたしたちは夜を歩いた

淡い満月が出ていた

道の端には待宵草が

 

あのひとが手折ってくれたとき

あ この甘さだわ

昏れていく山道に黄いろい灯りを

競って咲いた 行く手を照らした

あのころ なにもかもがはじまりだった

歳月さえも

 

花ははんなりと小ぶりで

月とまるで同じだった

月はいっそうおだやかで

かたわらのひとでもあった

 

  内部の風景

 

いちばん終(しま)いのあなたの呼吸(いき)が

わたしの内奥(うち)に入っていった

わたしの中枢(おおもと)

さびしい底のもっと底

 

いちめんの草紅葉のうえ

風のゆくのがみえる

あなただわ

わたしをゆらすあなただわ

 

  これからは

 

黒い身じたくであのひとはいま

車にのりこむ

そのとき あのひとを抱いた

 

わたしのなかに入っていてね

そしたら死なない

わたしといっしょに生きるのよ

 

立ったままだったけれど

あのひとは嬉しそうだった

 

ドアを閉める音がして

とまとの枝がわずかにゆれた

かおりが青くわたしを流れた

 

ゆめのなかだったけれど

あのひとにもういちど伝えた

わたしといっしょに生きるのよ

 

  女郎花

 

やわらかなひかりがみえる ひかりは

あつめられてひと粒になり ひと群れになり

咲きだした五弁(はなびら)は もう数えきれない

 

あるいは花の背後からひかりは湧いているのではないか

なつかしさのようなところから こうしていると

ひかりの呼吸になっていく

 

わたしのいまがゆるやかになる

みちたりてくる

真午のしずかがわたしをあふれ

女郎花のかたちがゆれる

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Funaki Tomoko
日本ペンクラブ 電子文藝館編輯室
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