招待席
国際ペン会長 詩人・作家 1940年 メキシコ・コンテペックに生まれる。 30冊の詩集が13ヶ國で翻訳出版されている。 1997年 永く活動を休止していたメキシコ・ペンセンターを再興し、同年国際エジンバラ大会で会長に選出された。 掲載作は、平成四年(2002)七月、 夫妻で訪日、同十五日の日本ペンクラブ歓迎懇親会の席上、自ら朗読された自作の詩二編である。原作のままを図版で示す。 後日、日本語に訳したものも付す予定であるが、原作だけでも氏の滞日中に「ペン電子文藝館」に掲載し、敬意を表したい。


「十三歳の自画像」
命拾いした私が、
屋外の床屋の椅子に座っている。
架台の上に置かれた、
鏡の向こうに広がる丘。
足載せ台にならぶ
古びた靴の舌革を見つめる。
肘掛け椅子のばねが背中をつつく。
床屋のチョンは櫛で髪を分け、
鋏が私の頭の上を進み
髪の房が敷石に落ちる。
飛び回る蝿たちは石の上で日を浴びたり、
チョンの額にとまる。
耳を動かし彼は蝿を追い払う。
村に漂う堆肥と薔薇の匂い。
床屋は職人芸をわたしに示す:
完璧に丸い坊ちゃん刈り。
手鏡の中
夕日が丘に沈んでゆく。
「光を詩に歌おう」とつぶやくわたしは、
もう詩人だと感じていた。
「五十四歳の自画像」
わたしの名前はオメロ・アリディス、
ミチョアカン、コンテペック村の生まれ,
五十四歳、
家族は妻とふたりの娘。
我が家の食堂で
最初のいくつかの恋を知った:
ディケンズ、セルバンテス、シェイクスピア
そしてもうひとりのホメロスたちの恋。
ある日曜日の午後、
フランケンシュタインは村の映画館を抜け出し
小川のほとり、
ひとりの少年に手を差し伸べた。それはわたしだった。
人の肉片で結ぎ合わされたプロメテウスは
彼の道を歩みつづけたが、それ以来、
その怪物との出会いによって、
罵りと恐怖がわたしのものとなった。
訳 山本厚子
“Ojos de otro mirar” (もうひとつの視線の目)1998年