●マリーナ・レヴィツカ──Marina Lewycka
◎朗読劇とスピーチ「おっぱいとトラクター」 9月25日16:15~17:45 大隈講堂
朗読=片岡一郎(活動写真弁士)
脚本=青木純子、画・CG=里中満智子・四位雅文、ピアノ=柳下美恵
朗読に引き続き、作家本人によるスピーチがあります。
ウクライナ移民2世。自身の生い立ちをベースにした作風が独特の文学性、ヒューマニズム、ユーモアを持ち、ヨーロッパで高い評価を得ている。
1946年、ドイツ・キールの難民キャンプで生まれる。両親はウクライナ出身。彼女が1歳のとき、一家でイギリスに移住。受け入れ施設に滞在後、サセックス州で高齢の夫人の世話をする仕事を見つけ、一家で住み込みながら、母親が夫人の世話を、マリーナはあひるの世話をして日々を送る。この時期に、老婦人から英語を教えられる。1949年、一家はドンカスターに近い小さな炭鉱の町に自宅を構えて、父はトラクター会社に勤務する。マリーナは4歳から詩を、小学校の低学年でストーリーを書き始める。
1954年、一家はドンカスターへ移る。現地の学校では移民であることが原因でいじめにあうが気にせず、ベッドで冒険小説を読むことが日々の楽しみだった。高校時代に洗練された文学を読み始める。その後、キール大学で英語と哲学を学び、多くの文学作品に触れる。好きな作家は、形而上派の詩人、チョーサーの他シェークスピア、イエーツ、ジェイムズ・ジョイス。その後ヨーク大学で修士号を取得。
現在、シェフィールド・ハラム大学で教鞭をとっている。高齢介護関連の著作が6冊ある。2005年、58才で小説家としてデビュー。自伝的要素の多い処女作『おっぱいとトラクター』は、英語圏で100万部超のベストセラーとなり、35カ国語に翻訳されている。同作はブッカー賞の候補となり、イギリスのコメディ賞Bollinger Everyman Wodehouse Prizeを女性では初めて受賞。『エリザベス』のプロデューサー、アリソン・オーウェンにより映画化の企画もスタートしている。2007年にはイチゴ農場で働く移民たちを主人公にした2作目Two Caravansを発表(米国とカナダではStrawberry fieldsというタイトルで刊行)。
2009年7月に発表した風変わりな老女と中年女性が主人公のWe Are All Made of Glueは、レヴィツカ特有のユーモアたっぷりのストーリーながら、民族の対立や老いなど、重いテーマを扱っている。作家としては不遇の時代が長かったマリーナは、成功した今でも客観的な視点を失わずにいる。遅い作家デビューながら、精力的な執筆活動を続けている。
おっぱいとトラクター A Short History of Tractors in Ukrainian
イギリスに暮らすウクライナ移民のニコライは84歳。2年前に妻を亡くして以来ひとりでくらしていたが、ある日、ウクライナから来たヴァレンチナ(36歳)と再婚すると言い出したから、娘のナジェージダ(47歳)とヴェーラ(57歳)はびっくり仰天。母親の遺産をめぐって対立していた姉妹だが、慌てて一時休戦。
財産目当てに違いない若い女性から父親を守るべくタッグを組み、ヴァレンティナの追い出し作戦をスタートする。豊満なおっぱいに露出度大のセクシーな服でニコライに迫るヴァレンチナVSそれぞれ違う時代に育ち・違う人生観を抱えながらもイギリスで生活を築いてきた姉妹。全く価値観の違う3人の闘いは日に日にエスカレートする。姉妹の心配をよそに老父ニコライは、ヴァレンチナにメロメロで、なんだかんだとお金を搾り取られ始めるが...。
イギリスで女性として初めてコメディ賞を受賞、ブッカー賞候補にもなった、哀歓いっぱいの傑作小説。
写真=Ian Phillpott


