●チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ──Chimamanda Ngozi Adichie
◎朗読劇とスピーチ「なにかが首のまわりに」 9月24日18:00~19:10 大隈講堂
ナイジェリアから米国へ移り住んだ若い女性が感じる驚きと違和感と寂しさ。異文化同士の個人が理解し合うとはどういうことか。数々の文学賞を受賞し、いまもっとも注目される若手作家が〈アメリカの現実〉と〈アフリカの現在〉を繊細に捉えた意欲作。
朗読=松たか子(俳優)、脚本=くぼたのぞみ、彫刻・CG=中村圭、四位雅文、作曲・チェレスタ・ピアノ=森ミドリ
1977年、ナイジェリア南部のエヌグで生まれ、大学町スッカで育つ。イボ民族の出身。ナイジェリア大学で短期間、医学と薬学を学び、19歳で奨学金をえて渡米。ドレクセル大学、東コネティカット大学でコミュニケーション学と政治学を学ぶ傍ら、次々と作品を発表する。ストーリーテラーとしての天賦の才に恵まれ、抜群の知性としなやかな感性で紡ぎだされる物語は、繊細で心にしみると好評を博す。2003年にO・ヘンリー賞、PEN/デイヴィッド・T・K・ウォン短編賞を受賞。その後も数々の賞にノミネートされ、05年コモンウェルス賞を受賞した初長編『パープル・ハイビスカス』につづき、ビアフラ戦争をテーマとした長編『半分のぼった黄色い太陽』では07年オレンジ賞を最年少で受賞。「ランドマークとなる小説」と絶賛の嵐をまきおこす。08年はマッカーサー基金フェローシップを授与され、イェール大学でアフリカ学を修め、現在はナイジェリアと米国を往復しながら次作の構想を練っている
「なにかが首のまわりに」The Thing Around Your Neck(既訳邦題「アメリカにいる、きみ」)
ナイジェリアの少女「きみ」は運良く米国のヴィザを手に入れて、メイン州に住むおじさんを訪ねる。カレッジへも通わせてもらったが、学友から「アメリカに来るまで車を見たことはある? 編んだ髪をほどくとまっすぐ立つの?」などと質問ぜめにされ、多くの無知と偏見に直面する。しかもおじさんのセクハラにあってその家を飛び出し、別の州のレストランでウェイトレスとして働くことになる。やがてお客の学生と恋が芽生えるが、彼が菜食主義で肉は食べないと言うとき、きみは故郷では小指の先ほどしか食べられない貴重な肉片を思う。彼が人工調味料には発ガン性があると言うとき、母親が香辛料は高すぎると、グルタミン酸ソーダ入りキューブを使っていたことを思う。でも彼のおかげで、故郷を離れて以来、夜になるときみの首に巻きついて眠りを妨げていたなにかが、だんだん消えていきそうな気がしてきて──アメリカに渡ったナイジェリアの少女のふかい悲しみを、切なく、細やかなタッチで描いた短篇。
付記:本作品は、日本オリジナル編集の短篇集『アメリカにいる、きみ』(河出書房新社、2007年)所収の表題作だが、2009年に著者による自選短篇集が刊行されたとき、作品タイトルが雑誌発表時の「You in America」から「The Thing Around Your Neck」と改められた。内容も多少手直しされているため、今回は自選短篇集に収録された最新バージョンを改訳する。
写真=© Okey Adichie


