●日本出版学会/日本ペンクラブ 第1回合同シンポジウム報告
シンポジウム「グーグルブック検索和解協定を検証する」
~出版流通・表現の自由・国際比較の観点から~
2009年6月30日(火) 午後6時~午後8時半
東京電機大学(神田キャンパス) 7号館 丹羽ホール
【パネリスト】
三浦 正広(国士舘大学)
「日米における著作権法の違い・フェアユースについて」
原 若葉(弁護士)
「集団訴訟・ベルヌ条約について」
植村 八潮(東京電機大学出版局 日本出版学会副会長)
「日米における出版流通や出版契約慣行の違いについて」
山田 健太(専修大学 日本ペンクラブ言論表現委員会委員長)=司会
「グーグル協定概要・表現の自由の立場からの問題提起」
6月30日に日本ペンクラブと日本出版学会が合同でシンポジウムを開いた。タイトルは、「グーグルブック検索和解協定を検証する〜出版流通.表現の自由・国際比較の観点から〜」。アメリカで去年の10月にまとまったグーグルブック検索訴訟の和解協定案(以下、和解案)は、いま、世界中の著作権者や出版社の間で、大きな議論と混乱を巻き起こしている。本来は、グーグル対アメリカの作家協会、出版社協会の争いなのだが、アメリカ独特の「集団訴訟(クラスアクション)」となったことと著作権の国際条約である「ベルヌ条約」の「内国民待遇」という規定が、日米間にある関係から、この和解の結果について、日本の著作権者や出版社も、「巻き込まれ」て、アメリカの関係者と同じ利害関係を持つことになったのである。日本ペンクラブでも、4月に、デジタル時代の著作権という観点からこの和解案に対する懸念を表明しているが、和解案をまとめた「和解契約書」や添付書類が、膨大で、判りにくいことから、余計に混乱を大きくしている。そこで、日本ペンクラブでは、日本出版学会と合同で、専門家を招いて、和解案を検証するシンポジウムを開いた。パネリストは、国士舘大学教授の三浦正広、弁護士の原若葉、日本ペンクラブ言論表現委員会委員長の山田健太、同じく委員の植村八潮(敬称略)。会場の東京電機大学の丹羽ホールには、約150人が集まり、午後6時から9時まで、専門家の熱心な話し合いに耳を傾けた。第1部は、専門家の基調報告、第2部は、パネルディスカッションという構成。紙数の関係があるので、第1部を中心に紹介。専門家の発言要旨は、和解案のキーワードである、「フェアユース」「クラスアクション」「オプトアウト」などの解説に絞る。
三浦:日本の著作権は、財産権である著作権と著作者人格権を保護しているが、アメリカの著作権(コピーライト)は、純粋な財産権の保護であり、アメリカの著作権法にある「フェアユース」規定は、社会の発展などで、多様に解釈されてきたので、個々の権利保護の色彩は、薄い。「フェア」とは、社会にとっての「フェア」を重視する。
原:アメリカで独自に発展した「クラスアクション(集団訴訟)」の「クラス」とは、「共通点をもつ一定範囲の人びと」の意味で、訴訟の場で、クラス構成員として認定されると、訴訟結果に、基本的に拘束される。個人が、大きな組織を相手にする公民権訴訟や消費者訴訟で、活用されて来た。アメリカの関係者の間でまとまった今回の和解案は、「ベルヌ条約」との関係で、アメリカ以外の各国の関係者を巻き込んでいるが、アメリカの裁判所をはじめ、訴訟の当事者たちは、外国への影響という視点が弱く、外国の権利者に関する規定が曖昧である。それが、日本の関係者の間で、混乱を大きくしている。
山田:日本の関係者も、「オプトアウト(離脱)」をしないと和解案に同調したことになってしまうが、これは、ユーザー対応にコストを掛けないで済むという面もあり、グーグルの企業姿勢を伺わせるのではないか。和解案は、基本的にグーグルにメリットのある内容になっている。
植村:グーグルは、絶版本をデジタル化するが、「絶版」の判断は、グーグルがする。その基本には、「商業的入手可能性」という概念がある。これは、アメリカの商習慣で言う「流通経路」に書籍を提供している状態という意味で、「提供」していなければ、絶版と判断される。「絶版」ではないが、「品切れ重版未定」で、書籍が提供されていないという日本の出版業界の商習慣とは、異なるので、これも、混乱に輪をかけている。
第2部では、会場からの質問も含めて、さまざまな意見がでた。ペンクラブが関心を持つ「表現の自由」は、民主主義の根幹である「国民の知る権利」を担保するものだが、出版・流通の自由が、表現者ではない巨大な私企業の利潤追求という経営感覚だけで、管理されてしまうと、知る権利が阻害される恐れがある。グーグル単独主義の背景にアメリカ単独主義が、透けて見えて来る。
文責/大原雄(言論表現委員会委員・理事)


