2011活動報告

シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」報告

子どもの物語.gif【開催日】平成23年9月24日(土) 午後2時~4時

【会場】大阪産業創造館

【パネラー】今江祥智(児童文学作家)
里中満智子(マンガ家)
越水利江子(児童文学作家)
令丈ヒロ子(児童文学作家)
ひこ・田中(児童文学批評家)


【主催】日本ペンクラブ
【後援】朝日新聞社、大阪府子ども文庫連絡会、(財)大阪国際児童文学館、(社)日本国際児童図書評議会、日本児童図書出版社協会、日本YA作家クラブ、読売新聞社

  子どもゆめ基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)助成活動

 

 「子どもの本」委員会が、子ども夢基金(独立行政法人国立青少年教育振興機構)の助成を受けて企画した、シンポジウム「子どもの物語・大人の物語」は、9月24日(土)14時から、大阪市の大阪産業創造館会議室で開催されました。

 「子どもの本」委員会による関西でのイベントは初めてだったので、集客数が心配されましたが、朝日新聞社、大阪府子ども文庫連絡会議、日本国際児童図書評議会、日本児童図書出版社協会、日本YA作家クラブ、読売新聞社に後援していただいたことなどから、直前には定員いっぱいになり、当日は満席で開演することができました。

 

 最初に、「子どもの本」委員会副委員長、金沢千秋さんが開会のあいさつをした後、委員会メンバーで大阪在住の、ひこ・田中さんによる基調報告からスタートしました。ひこさんは、最近、子どもの本の作家が大人の文学の分野に進出して行く傾向が目立ち、またYA(ヤングアダルト)小説が大人にもよく読まれていることなどから、大人の物語と子どもの物語の境界があいまいになりつつある現状と、シンポジウムのテーマに沿って、パネリストの紹介をしました。

 それを受けて、高校在学中からからプロのマンガ家として活躍し、少女マンガの描く世界を拡張していき、圧倒的な人気を得てきた里中満智子さんが、子どもの頃の読書体験やマンガ体験などについてユーモラスに紹介しました。そして、子どもの物語とか大人の物語というのは、送り手が考えるだけであって、受け手である子どもたちにはそんな意識はない。また、子どもから大人になるのも個人差があって、50歳になっても大人になりきらない人もいるとも語りました。

 つぎは70年代から編集者としても子どもの本の枠を広げ、子どもの本という概念崩しをして、次々と新しい作家を登場させてきた今江祥智さんです。今江さんは、それが可能だったのは編集者に恵まれたのと時代がよかったのかもしれないと語りながら、自分が書けないものを編集者として作家に書いてもらったし、そういう中から川島誠さんや二宮由紀子さんのような新鮮な才能に出会ったと、会場の最前列に見えていた作家の名前を挙げながら体験を話しました。また、子どもの頃はマンガで育ったし、マンガ家になりたかったと語り、笑いを誘いました。

 マンガ世代の越水利江子さんは、少女時代に愛読した里中さんの雑誌連載マンガをとじ込んだファイルを持参し、いかに里中さんの作品に熱中したかを語りました。そして、大人の物語と子どもの物語ということでは、畠中恵さんの「しゃばけ」などの例を上げながら、大人の作家が子どもの本の手法を援用していることによって、よく読まれているのではないかと語りました。令丈ヒロ子さんもそれを受けて、大人の本と子どもの本の違いは書店の棚の違いくらいじゃないかと語り、少女時代に里中さんのマンガに夢中になったのはなぜなのかは、里中さんの話を聞いていてよく分かったと話しました。

 会場から、今江さんの話に登場してきた川島誠さんが飛び入りで突っ込みを入れたり、里中さんがデビュー当時の編集者との確執などを面白おかしく話したのを受けて、元小学館の編集者だった私、野上暁や、講談社の編集者だった金沢千秋さんに話が振られたり、パネラーと会場とをマイクが行ったり来たりしながら、爆笑の中であっという間に2時間が過ぎてしまいました。質疑応答の後、野上の閉会のあいさつで会は終了しましたが、その後に近くのレストランで登壇者全員と来場していた作家や編集者たち20数人での懇親会も大いに盛り上がりました。来場者のアンケートには、テーマからは逸れまくったものの、実に面白くて有意義だったとか、普通には聞けない話が聞けてよかったとか、またやってほしいというリクエストもいただきました。

 

文章=「子どもの本」委員会委員長・野上暁

写真=広報委員会副委員長・鈴木康之